光り輝くシャンデリアの下、色鮮やかな衣装を纏った貴族達がくるくると踊る。 その周りでは溢れんばかりの料理を囲んで 紳士淑女が談笑を交わしていた。 今日はこの国の第一王子の誕生日を祝しての舞踏会。 次期国王であるだけに、国をあげてのこの催しは豪華絢爛、参加数も相当なものだ。 そして今日は若い女性が多いのも特徴だ。 理由は、今日の主役の第一王子はまだ独身で婚約者もいないから。 そのためその座を狙う貴族の姫君達が多く参加しているのだ。 どうにか彼の目に止まろうと自分を飾り立て、会場はさらに華やかさを増していた。 けれど主役であるべきイザークは不機嫌そのもの。 さらにはそれを隠そうともせず、誰も近づけない雰囲気を作り出している。 「つまらなそうな顔。」 咎めるというよりは面白いとからかうような口調で、彼女はイザークの隣に立った。 彼と同じ月光の糸で紡いだような銀髪、海のように深いサファイアブルーの瞳。 鋭利な美貌もそっくりのその女性は現国王の第二妃エザリア。イザークの実母だ。 「今日の主役がそのような顔をしていては 誰も近づけませんよ。」 「心から祝っているのは何人いるか分かりません。」 その言葉に彼女は苦笑う。 「ですが、心から祝っている人達には失礼ではないかしら?」 「彼らには私の性格も十分に知られています。―――少し抜けても?」 パーティーはすでに佳境を過ぎている。 あとは周りが勝手に騒いでくれるだろう。 「そうですね。姫君達が押し寄せる前に離れた方が良いかもしれません。」 周りを見渡した彼女も頷いてそれを許し、イザークは軽く礼をして会場から出て行った。 →次へ --------------------------------------------------------------------- エザリア様は息子が可愛いのです。