実りの色は赤い果実 -27-




「逃げちゃった…」
 角を曲がったところでキラはぴたりと足を止める。
 そのまま壁に凭れて、途端襲った自己嫌悪に肩を落とした。


「何、してるんだろ…」

 あの場から逃げ出しても何の解決にもならない。
 この想いが消えてなくなるものでもない。


 止まっていた"時"が、あの2人が来てから少しずつ動き始めている。
 気づいていて、気づかないフリをしていて。
 でも、それもそろそろ限界だ。



 ―――シンは逃げずに1歩進んだ。

 今度はキラの番。それはキラも分かっている。
 ずっとこのままでいられないのも、ちゃんと分かっている。けど。


 変わることを怖れている。
 答えを出せば、きっと全てが変わってしまうから。…終わってしまうから。
 もう少しだけこのままでいたいと、叶わない願いを分かっていても願ってしまう。



「…ねぇフレイ、どうすれば良いと思う?」
 脳裏に浮かぶ華やかな美少女。イメージの中の彼女は変わらない。
 これからもきっと、ずっと彼女はそのままでキラの心に居続けるだろう。
「君ならこんな時どう言うのかな…」
 迷っていた時、悩んでいた時、彼女はその強い意志を持った灰青色の瞳で正面からキラを
 一喝していた。

『そのくらい自分で考えなさいよ!』

 そんな声が聞こえてきそうな気がして、キラは思わず苦笑った。


























 知ってしまった。
 彼女が追う視線の先の意味、それに"気づいていない"キラの意味。

 想い合っているはずなのに、どこかすれ違ったままの2人。

 気づいてしまったら無視できなくなった。
 彼の背中を見つめるラクスの切なげな瞳の意味、彼女の姿を見つけて柔らかく微笑むキラ
 の心の在処。

 見てる方は分かるのに、どうして本人達には分からないのだろう。


 そう思ったら、いてもたってもいられなくなって。






「ステラ、ちょっと協力してくれないか?」
 庭園でトリィと遊んでいた彼女を手招きして呼んで、内緒話をするように額が触れる距離
 で1つの提案を話す。

 本来その役目を負うであろうアスランはここにいない。
 ここにいるのは自分とステラだけだから。
 2人のことをどうにかできるのも自分達だけだ。


「キラと、ラクスの為に。力を貸して欲しいんだ。」

 シンの誘いに、ステラはもちろん 笑顔でうんと頷いた。






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短いですが、一度ここで切ります。
頑張れシン!(笑)←頑張る人が違う気が



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