実りの色は赤い果実 -12-
「え!? ステラがオムニの姫君!?」 「え、知らなかったの?」 キラは目を丸くして そっちの方が驚きだという顔をする。 さらにその表情は「王子なのに?」とはっきり告げていて、居心地悪さにシンは目を逸ら した。 一国の王子として――― 今は兄が王だから正しくは王弟なのだが、まだ日が浅いせいか 未だに"王子"と呼ばれることが多い …ってそれはどうでも良いとして。 王家に名を連ねる者としてそれくらい知ってなくてどうするのかと言いたいのだろうキラ の気持ちも分からないではない。 自分がキラでもたぶんそう思うだろう。 「だって、俺 国から出たことなかったし、当然会ったこともないし。」 「…名前くらいは知ってようよ。」 苦し紛れの言い訳は呆れられただけで、ますます立場が悪くなっただけだった。 「…… 逃げてばっかだったから、さ……」 全てのことから逃げて、周りを困らせても止められなくて。 ついには城からも逃げ出して、戻りたくなくてずっとここにいる。 …ずっと 逃げ続けている。 「どうして?」 「それは――――…って! 今はそんなんどうだっていいだろ!!」 つい全部話しそうになっていた自分に気づいて慌てた。 こんなことキラに話しても仕方ないのに。 「それより鍵! ステラが待ってんだから。」 「ああそうだね。」 待たせたら可哀相だよね、とキラはあっさり鍵をシンに手渡す。 無理に詮索する気はないようだった。 「これ1つでどの鍵穴にも合うから。」 不思議な屋敷はこんなところも普通と違うようだ。 見られて困るところとかないんだろうか? 「本当にどこでも行って良いのか?」 さすがに不安になった意外と常識人のシンが尋ねると、キラは気にすることはないと笑顔 で答える。 「自由にどうぞ。見られて困るところは見れないようになってるから大丈夫だよ。」 …やっぱり普通じゃないかも。 「楽しんでおいで」と見送られながら一抹の不安にかられる。 けれど、この屋敷の不思議はそんなもんじゃなかったと、後でシンは思い知ることになる のだった。 「まずは上と下 どっちから行く?」 「下!」 元々ステラがラクスに読んでもらった本、「地下世界大冒険」から派生した今回の屋敷探 検。 彼女の興味はやはり地下にあるようだ。 即答に近い返答に笑いながら、シンは下への階段を下り始めた。 片手には蝋燭の火を灯した燭台を持ち、反対はステラと仲良く手を繋ぐ。 地下へ続く階段は 先導するように壁の燭台に火が点いてもどこか不気味に薄暗かった。 …勝手に火が灯ること自体謎なのだが、そこはシン達も慣れているので気にならない。 「たからものがあったらいいなー」 「どんな?」 「……ケーキ!!」 「それってステラが食べたいおやつじゃん。」 そんな風に笑い合いながら、2人の小さな(?)冒険は始まった。 >>NEXT --------------------------------------------------------------------- 遅くなりましたが、シンステです。 思った以上にページを喰ってしまったので分割です。 仲良くしているシンステはほのぼのしていて可愛いです☆