実りの色は赤い果実 -07-




 コトの発端は少し前、ステラの伴侶探しの噂が広まり始めた直後のこと。


「俺は認めない!」

 ステラの話に最初に真っ向から反対したのはスティングだった。
 それから彼は 次々にやって来る候補者達を片っ端からその剣で叩き伏せてきた。…ちな
 みに剣での決闘の意味でだ。
 つまりは「ステラと結婚したければ俺を倒してからにしろ!」ということらしい。


「じゃあどんなヤツなら認めるのさ?」
 自分はどうでも良いやとまるっきり他人事だったアウルだが、兄のあまりのシスコンっぷ
 りにさすがにそうもいかなくなった。
 怖くて誰も近づけないという周りに押されて 呆れつつ尋ねてみる。
 聞かれたスティングの方はしばし考えて、たった1人だけ浮かんだ人物の名前を挙げた。
「そりゃキラみたいな―――… キラなら俺だって認める。」

 自分より1つ年長の王子。唯一剣を認める相手。
 その彼ならステラを任せても良いと。
 それを聞いた重臣達は影でコソコソと話し始める。


「…何だ?」
 会話が聞こえず眉を寄せるスティングに対し、聞こえなくても察しがついたアウルは溜め
 息をついた。
 ステラのことがあっという間に広まったのも彼らのせいだ。彼らに聞かれるとロクなこと
 がない。
 今回のこの騒ぎのおかげでステラは王宮にいられなくなって 今は"彼"のところに預かっ
 てもらっているし。本当に困った人達だ。

 ―――昔から変わらない、この老臣(ジジイ)達は。


「…あーあ。巻き込み決定だね。」
「なに!?」

 スティングが今さら気づいてももう遅い。
 傍迷惑な老臣達は 王の意見も聞かずに勝手に話を進め始めていた。

















 使者との謁見に同席することを許されたカガリとアスランは 王が座る玉座の後ろに立っ
 て事の次第を見守っていた。

 オムニからの使者だという若者は 赤絨毯に膝をつき、頭を垂れて長々とお決まりの挨拶
 を並べる。
 そうしてから持ってきた書状を見て下さるようにと王を促した。


「―――我が国の姫君の伴侶候補としてオーブのキラ王子の名が挙げられております。」
 しかも最有力なのだと彼は付け加える。
 そして側近が持っていた書状を王が広げると、確かに正式な文書としてその旨が書かれて
 いた。

「ちょっと待て! どうしてキラが候補者に上げられるんだ!?」
 横からそれを盗み読みしたカガリが耐え切れなくなって叫ぶ。
 驚きで目を丸くする使者を見て 彼女を止められなかったアスランは思わず額に手を当て
 るが、この場合 止めても多分無理だっただろう。
 それに王も何も言わないので アスランもそのまま好きにさせることにした。

「今のキラは王子じゃないんだぞ!?」


 あれは2年前のアスランとカガリの婚約発表の日。
 公の場で王位継承権の放棄を宣言した彼はすぐ後に王宮からも出て行き、今は森の屋敷で
 静かに暮らしている。
 親子の縁を切ったわけではないから身分上は王子なのかもしれないが、本人は2度とここ
 へ戻ってくる気はないと言っているし、国政にも関わらないと言っている彼に王子として
 振舞えと言う者は今王宮にはいなかった。


「私はただの使者ですので詳しいことは…」
 彼女の剣幕に押されながらも困ったように彼は言う。
 確かにただ書状を届けに来ただけの彼にこれ以上を求めるのも酷な話だ。

「しかし、これが決定事項だというのは確かでございます。」




「…これは早急に城を出た方が良さそうだな。」
 使者の元へ飛び出しそうになる彼女をさすがに止めたアスランが小声で囁く。
 すぐに用意しよう と出て行こうとする彼の腕を逆に引いたカガリは、真剣な顔でアスラ
 ンを見上げて。

「でもこれならキラの所へ堂々と行ける理由にもなる。私も行く。」
 それはもう彼女の中では決定事項。止めても無駄だとその目が告げていた。






    >>NEXT


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昨日は眠かったので編集できず 1日遅れて後半です。
そしてスティングはシスコンです(断言)
ここまで書いておいて、実はアスカガの次の出番はずっと先だという……(汗)



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