実りの色は赤い果実 -06-
「へぇ。ステラ姫が。」 位置的な関係で少々遅れたが オーブにもその噂はもたらされた。 カガリがそれを知ったのは王宮内の自分の執務室。王達がさっき話しているのを聞いたと アスランが持ってきた。 以前はキラと2人で使っていた勉強部屋だが、彼がいない今は彼女が執務室も兼ねて広々 と使っている。 …とはいっても、アスランも一緒だから1人で使っているわけではないのだが。 「ま、うちはキラもいないし関係ないけどさ。」 さらっと一言で片付けて 彼女は手に持っていた書類を脇に置く。 最近は次期王として任されるものも増え、アスランと相談しながら片付けている毎日だ。 「そうだな。…それより俺達の問題はこっちだ。」 アスランもそれは終わったともう1つの"噂"に考え込む。 それにカガリもまた顔を顰めて1枚の紙を手に取った。 「―――森にいるはずのラクスがどうして公の場にいるか、か。」 これはプラントへ赴いたキサカが持ってきた噂というより情報だ。 プラントの国王は今西端の港へ視察中で、城に残った若い宰相が留守を任され取り仕切っ ていたはずだった。 けれど出迎えたのは彼だけではなく、そこにラクス姫もいたのだという。 「替え玉?」 「そんなことするほど重要なことがあるのか?」 この時期なら王が首都にいなくても問題がないから長期不在にしたのだろうし。 そうでなければあの賢王が城をあけるわけがない。ましてやラクスが必要になることなん て。 …2年前、キラを追って森へ行くことも笑顔で許したあの方が。 「それに、王公認の替え玉ならこの振舞いは問題だと思うが。」 「…それは確かに。」 こっちの情報はAAから回ってきたものだ。 キサカの前では完璧に演じ切った"ラクス"の良くない噂。 高価なドレスや宝石を欲しがって、我が儘で古くからラクスに仕える侍女や女官を困らせ ているという。 さらには自分のお気に入りだけを傍に置き、機嫌を損ねさせた古参の者達は次々追い出し てしまったとまで。 姫の中の姫と呼ばれるラクスの品位を落とすような真似を王がするだろうか? 「しっかしどこから連れてきたんだか。」 今回のことにカガリは呆れるより感心してしまった。 何が目的か知らないが あの"ラクス"そっくりの女性をよく用意できたものだ。 その替え玉の少女もよくやる気になったと思う。 "絶世の美女"、"女神の化身"と呼ばれるあの姫を演じるなんて、よほど自分に自信がある か魔法でも使わない限り不可能だ。 「ラクスには報せるべきだろうな。」 「…だよな。アスラン、お前が行くか?」 カガリの問いにアスランも首肯で答える。 「ああ。他人に任せて良い情報じゃないからな。」 カガリは王宮を離れられないがアスランならその辺はある程度自由だ。 ならばできるだけ早い方が良いと 話がまとまりかけた時、 「大変でございます!」 「ん?」 ノックも挨拶もすっ飛ばしてマーナが駆け込んできた。 相手はカガリが母親代わりと慕う乳母のマーナだからその辺は咎めることもしないが、彼 女は珍しく息を切らして焦った様子。 それに2人でどうしたのかと目を向けた。 「オムニから大使の方が…!」 「はぁ?」 それのどこが大変なんだろう? カガリとアスランは顔を見合わせて首を傾げる。 その意味を知るのは それからすぐ後のことだった。 >>NEXT --------------------------------------------------------------------- そんなわけでアスランとカガリです。 甘やかな雰囲気が微塵もない気がするのは気のせい…ではないと思います。