お伽話のそれから -01-




 あの日に戻れたら…

 ずっと願っている。あの人の心を失ってから。



『―――その願い、叶えてやろうか?』



 聞こえたのは知らない男の声

 すがったのは、ボロボロの心が もう限界だったから…

















 その日 キラは書庫にいた。
 最近はアスランの公務の一部も手伝うようになり、その関連資料が欲しくて探していたの
 だ。

「キラ様!」
 静かな書庫にサイの焦った声が響いたのはキラが3冊目の本に手を伸ばした時。

「急いでいらしてください!王子がお倒れに…!」
「え…!?」

 それを聞いた瞬間 キラは全てを放り出して書庫から飛び出す。

 結局、その3冊目の本が手に取られることはなかった。






 サイの話によると アスランは執務中に突然頭を押さえて苦しみだし、そのまま気を失っ
 てしまったらしい。
 彼はすぐに人を呼んでアスランを部屋に運ぶと、後を医師達に任せてキラを呼びにきたと
 いう。
「…でも さっきまで元気だったのに……」
 だってキラは書庫に行く前までアスランと一緒にいたのだ。
 変わった様子はなかった。別れ際も笑顔で顔色も良かったし、キラはその颯爽と去る後ろ
 姿を見送ってから書庫へ向かったのだから。

 何も思い当たらない。
 その分 不安が広がっていく。





「誰だ…?」


 ほんの少し前まで「愛してる」と美しく微笑んでくれた彼が突然消えてしまうなんて思い
 もしなかった。
 あんなに冷たくて 不審なモノを見るような瞳で見つめられるなんて考えもしなかった。


 君に愛されてここにいる僕は、君を失ったら生きる意味さえないのと同じ。
 今の僕の全ては君だけだったのに。

 なら それを失くした僕はどうすればいいの?






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そんな感じで連載開始です(短)



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