5/18、双子は一緒にキラの家に帰るのが決まり。
何故なら2人には 本番の夜に備えての準備があるからだった。
Turning Point =キラカガBD話=
「ただいまー」
「おじゃましまぁす。」
玄関のドアがパタンと閉まる音と同時に 奥のキッチンからカリダが迎えに出てくる。
夕食の準備は必要無いはずの彼女がエプロン姿なのは、たぶん今夜2人がほとんど食事に
ありつけないことを知っているからだろう。
奥から微かに香る甘さはクッキーか何か。お菓子なら着替えた後でも食べられるし、小腹
を満たしておくにはちょうど良い。
そんな彼女らしい細やかな気遣いがキラには嬉しくて誇らしかった。
「おかえりなさい 2人とも。―――準備はできてるわ。」
キラとカガリに順に頬にキスを落とした彼女はふわりと微笑んで2階を指差す。
その瞳は非常に楽しげでどこか少女めいて見えて。
……今年のプレゼントは一体何なのだろうかと、キラの胸に一瞬不安が過ぎった。
――― そして見せられた今年の彼女からの"プレゼント"には、
去年までとは違う意味で驚かされた。
「今年は2人の18のお祝いでしょう? だから特別にこの色にしたの。」
悪戯が成功した時のように 上機嫌のカリダはポカンとして立ち尽くしている双子の後ろ
でクスクス笑っている。
彼女の趣味は洋裁で、キラが彼女の息子になってからは毎年 双子に服を作ってプレゼン
トするのが通例となっていた。
そして夜のパーティーでお披露目するのだが、年々腕を上げてグレードアップしていく
"プレゼント"はついにここまで来てしまったのか。
「…僕たちに結婚しろと?」
先に我を取り戻したキラがやっとそれだけ口にする。
隣のカガリはまだ見つめたままで何も言えずに固まっていた。
10畳程度の部屋の中央に並んだ真白い対の衣装。
タキシードの袖の部分にはビーズ刺繍で細かい模様が縫い止められているし、ドレスの方
もフレアスカートの上に被せられたオーガンジーに同じく小さな花模様が編み込まれてい
る。手袋もベールもティアラに至るまでおそらく彼女が自身で作ったもの。
彼女の意気込みが伺い知れるが それだけに冗談で済まされないような気にもなって。
けれど、そんなキラの危惧などお構いなしに カリダは笑顔を絶やさずに言った。
「それはアスラン君やラクスさんにに悪いわ。もちろんお遊び。その証拠に少し色が入っ
ているでしょう?」
確かによく見れば キラの衣装は薄い青だし、カガリのドレスも生地は薄く緑がかって見
える。
けれどその色は本当によく見ないと分からないほどの薄さで。
「シャンデリアの下じゃ分からないと思うけど…」
白光の下で目を凝らしてやっと分かる色を誰が見分けられるだろう。
誤解、されないとは限らないのに。
「あら。だってすぐ分かっちゃったら意味がないもの。」
どうやら確信犯だった彼女はさらっと答えてキラを脱力させた。
「ほら、早く着替えちゃいなさい。主役が遅れるわけにはいかないでしょう?」
彼女はてきぱきとマネキンからタキシードを脱がせて簡単にまとめるとキラに渡す。
そして自分はカガリの手伝いをするからと キラを隣の部屋に追い出した。
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2ヶ月ほど遅れてますが(死)、やっと完成した双子のBD話です。
えーと、キラ達親子はヤマト家本宅ではなく少し離れた別宅に住んでいます。
本宅はお屋敷ですが別宅は普通よりちょっと大きめな一軒家くらい。お手伝いさんもいなくて本当に3人暮らし。
理由はキラではなくカリダさんの方にあります。ハルマさんは彼女を思って別宅暮らしをさせているのです。
―――そんな隠れた設定はけっこうあるんですけど なかなか出す機会がないんですよね。
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