第3話 − 2人の幸せは僕の幸せ



 彼女が転校してきてから、カガリとアスランの関係はますます悪化したようだ。
 あの日以来2人は今だ全く口を利いていないし、帰りも一緒に帰っていない。
 昼休みもカガリはクラスの女子と食べていて、そのままいなくなることもしばしばで。
 アスランは声をかけるチャンスさえ失っていた。

 すれ違って、すれ違いすぎて。
 そのまま2人はタイミングを逃している。


 ―――それに納得いかないのは とばっちりを食らったキラだったのだけれど。
 2人の喧嘩のおかげでキラもカガリと過ごす時間が減ったのだ。
 かといって、いくら違和感ないと言われても女子の中に入るのは抵抗あるし。
 結局はやっぱり元の形が一番良いと思っている。

 …んだけれど。





「カガリ。一緒に食べようよ。」
「嫌だ。」
 昼休み、今日もめげずに彼女を昼食に誘ってみたものの即答で却下されてしまった。
 そう言われることはキラも分かっていたけれど いつもと勝手が違って難しい。
 今のカガリにはキラにすら取り付く島もない。

「私はまだアスランと絶交中だ。あっちの女子と食べる。」
 そう言ってすぐに背を向けられてしまった。


 今回の喧嘩は最長記録。
 2、3日の喧嘩なら何度かあるけれど、こう長く続かれてしまってはさすがにどうすれば
 良いのか。
 いい加減巻き込まれ状態のキラも困り果てていた。

 でも、そんな僕よりも―――




「―――だって。」
 今日も失敗した旨を伝えれば、凹んだアスランは頭を抱えて机に突っ伏す。
 当然だけどキラより当のアスランの方が堪えているようだ。

「…あら、喧嘩ですか?」
 コトンと可愛らしい弁当箱を机に置きながら首を傾げて尋ねてきたのはアスランの隣にい
 る少女。
 既に定位置と化しているが、これもカガリの機嫌が戻らない原因の一つだったりする。
「一方的なものだけどね。」
 君が原因なんだ。とはさすがに言えず、それは心の中に留めておいて。
 苦笑いで答えるとキラはすぐにアスランへ視線を戻した。
「カガリも頑固だから。言わなかった君も悪いんだし、今は耐えるしかないんじゃないか
 な。」
 肩を叩いて慰めだか何だか分からない言葉をかければ アスランからは深い溜息が返って
 くる。
 その気持ちは分からないでもない。
 でも、キラにも他に言いようがなくて。
「いつまでこの状態なんだ……」
「え、そりゃ君が―――…っと。」
 きっぱりはっきり告白でもしない限り―――なんて、婚約者の前で言うことではない。
 再び言葉を飲み込んだものの、このままだと何か余計なことを言ってしまいそうだ。
 この話題は早々に切り上げることにした。

「とにかく。怒らせてしまったのは君なんだから君が頑張るしかないよ。」






 ―――どうして上手くいかないんだろう

 2人には幸せになって欲しいのに
 僕の幸せは叶わないから、その分の幸せを君達に願うのに

 そして、それを壊そうとするのが どうして君なの……?







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ちょっと短いですが、少し加筆してます。




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