01. Kira side
「―――それは ダメだよ…」
彼女の言葉に首を振った。
「それじゃ"彼女"と同じだ。そんなことはできない。」
「…私が構わない、と言ってもですか?」
彼女は優しい。
だからそんなことを言うのだろう。
「哀しいだけだよ? 幸せにはなれないんだよ?」
かつて孤独を埋める為に関係を重ねた少女。
今また 同じことをしようとしている。
彼女の願いは"それ"だ。
だから、応えることが できない。
「けれど 貴方が独りになってしまいますわ。」
そう言う彼女は哀しそうな瞳をしていた。
まるで自分の痛みのように。僕の痛みを我が身のように受け入れて。
でも、それは僕が望まないことだから。
「良いんだ、それで。君が巻き込まれることはない。」
極力優しい笑顔を作って言った。
知っていた。
彼の隣はもう僕じゃないこと。
彼が守りたいのは僕じゃない。
世界が2人きりだった頃はもう遠く
アスランは外へ飛び立ってしまった
楽園に取り残されたのは、僕
「巻き込むのではありませんわ。貴方の傍に私がいたいだけなのです。」
望む答えをくれたのは、彼の元婚約者。
「忘れなくても構いません。私はそれ以上を望みませんから。」
「ラクス…」
ふわりと彼女の身体が浮いて、唇が重なる。
触れるだけの、ほんの一瞬の口付け。
「私がいます。貴方の傍に、ずっと。」
得たのは偽りの安らぎ
失ったのは願っていた未来
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停戦直後のエターナルにて。
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