鎮魂歌 -requiem- (5)




 その時、ラクスは 割り当てられた自室のベッドで短い睡眠を取っていた。
 やらなければいけないことは山積みで、その為に自分は常に万全の状態でなければならない。

 そしてそれは、
 どんなに短くても最低限の休息は取らなければならないと、まどろみに意識を預け始めた頃
 だった。




「……?」
 不意に 気配に目が覚める。
 他には誰もいないはずの部屋に感じる、何者かの気配。
 そっと目を開けた。


 ――― 光が、そこには在った。


 闇の中でも淡い光に包まれて浮かび上がっている一人の少女の姿。
 自分は彼女を知っている。

「フレイ、さん…?」

 目の前で最愛の父を失った少女。
 自分に"戦争"を、その残酷さを見せた少女。

 雰囲気は随分変わったけれど、間違いはない。


 <お願い キラを助けて!>
 縋るような目で、必死な声で、彼女は第一声にそう叫んだ。

「え?」
 困惑の色を隠せないラクスに フレイはさらに懇願する。

 <私じゃダメなのよ。私じゃキラを止められないの。>


 事情はよく分からない。
 けれどキラの身に何か起こっているということと、それで助けを求められていることは理解
 できる。

「分かりました。」

 頷き 簡単に上着を羽織って、ラクスは部屋を飛び出した。




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