Punish
目の前で失われたもの、それが代償。犯した罪の償い。
もしこれが罰だというのなら、一体 誰の罰なのだろうか…
「毎日いらっしゃいますけど… よろしいのですか?」
挨拶もそこそこに、キラの元へ向かうアスランをラクスは後から追う。
「一応療養中の身ですから。時間は嫌ほど余っていますよ。」
だからこうして朝から来ているのだ。
笑ってアスランは振り返る。
「そうではなくて… アスランの身体が心配なのですわ。」
自分の体調を少しも省みないその態度に ラクスは半分呆れも入れて言った。
いくら腕の骨折は完治したとはいえ、「療養中」と銘打っているのだから 安静にしていなければ
ならない身体だ。
なのに、彼は毎日来ては夜になるギリギリ前まで キラの所に付きっきりでいる。
しかも2人の家はそう近い場所にあるというわけではない。
その道のりを彼は自分で運転してきているのだ。
これで倒れてしまっても 誰も文句は言えない。
「平気です。キラに会えるのならこれくらいのこと。」
それで療養の期間が延びることも、それで軍への復帰ができないことも、キラに会う為なら
些細なことだ。
むしろそれは喜ばしいことだとアスランは思っている。
「…アスラン。私の屋敷にお移り下さい。」
「え?」
突然の申し出に、思わずアスランは立ち止まってラクスを振り返る。
「利用できるものはするべきですわ。」
そう言って彼女は笑った。
「婚約者ですから。誰も疑問は持ちません。」
形だけの関係でも、こういう時くらいは役に立つものだと。
煩わしかっただけの肩書きに今は少しだけ感謝できる。
そう彼女は微笑み、同じ考えだったアスランも笑みを返した。
「私は彼を救えなかった… 貴方の代わりにお守りしたいと、そう思っていましたのに…」
けれど私では 彼の支えにはなれなかった。
キラは貴方でなくてはいけない。
「私も何かしたくて。これはその償いとお思い下さい。」
「ラクス…」
アスランはそれを快諾した。
―――キラ…
懐かしい声がする…
変だね、そんなはずは無いのに…
アスランはここには居ないのに。
…じゃあ何処に居るんだろう?
―――あぁ、あそこに居るんだね きっと。
「キラ…」
依然変わらないキラの手を取って アスランは切なげに呟く。
握り締めているこの手はこんなに温かいのに。
心だけは人形のように冷たいままで。
応えてくれない悲しさと、こうしてしまった自分への悔やみ。
知らず握り締める力が強くなる。
心を失うほど俺を想ってくれているのなら 何故…!?
何故目覚めてくれない、何故俺を見てくれないんだ…
俺はここに居るのに…っ!
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