Lost child −≪06≫
「…どこから話そうか。」
真剣な2人の表情を交互に見て、キラは苦笑いを浮かべて言った。
大通りに面したオープンカフェ。
眩しく反射する白に統一されたテーブルと椅子とパラソルと。
その1つのテーブルを囲んで3人はそれぞれ腰掛ける。
「…えーと、"キラ"…?」
まずおずおずと切り出したのは少女。
「今まで通りで良いよ アリア。」
「でも、本当の名前じゃないんでしょう?」
そう言う彼女は少し寂しげな様子で。
ファーストネームかもファミリーネームかも分からなかったその名前。
ただ、彼がそう呼んで欲しいと名乗った名前がそれで。
本名じゃないかもしれないと思っていた。
でもそれ以外に呼び名を知らなかったから。
嘘を付いて欲しくなかったけど、彼にも事情があると思ったから。
アリアの心中を察したキラはふと優しげな笑みを彼女に向けた。
「…IDはね。キラ・ヤマト、それが僕の名前。でも"ヒビキ"も僕の名前だよ。」
キラの答えに彼女だけでなくアスランも不思議そうな顔をする。
「ヒビキは僕の本当の両親のファミリーネーム。だからこれも僕の名前。」
「! でもお前…っ!」
あの時…!
「―――僕の親は今の父さんと母さんだけだよ。」
アスランの言いたかった言葉を先にキラが言う。
「でもアリアに嘘は付きたくなかったんだ。僕の名前で"僕"に繋がらないのはこれくらいだし。」
使いたくなかったわけではない。
我が子を研究材料にした父親をすぐにでも許せるとは言えないけど。
2人共を同じように慈しむ目で見つめる母親を見て。
少なくとも愛されてない子じゃないのは分かったから。
恨んでも嫌ってもいない。
ただ、彼らを親とは思えないだけ。
「そう簡単に見つからないと思ったんだけどな。…あっさり見つけてくれて。」
ふぅと呆れとも言えない表情で彼を見る。
「お前のことだからな。」
返した彼は当たり前だとでも言う風で。
「だって1カ月だよ? せめて半年は大丈夫だと思ってたのに。」
「そんなに俺が耐えられるわけがないだろう。この1カ月ですら気が狂いそうだったぞ。」
「…意外に気が短いよね、君。」
3年間も音信不通で離れていたのに何をいまさら。
けれど彼に言わせればだからこそ、だそうだ。
「短気で狭量なのはキラに関してだけだがな。」
「自覚があるだけ怖いよね。」
「…そう言えば貴方の名前を聞いてないわ。」
貴方達がどの程度の知り合いなのかは分かったけれど。
どんな関係なのかも今の会話で分かってしまったけれど。
彼女の問いかけに2人は顔を見合わせる。
そして、何故だか少し言いにくそうな表情をしていた。
「えーと、彼はアスラン・ザラ。」
「はじめまして。アリアさん?」
沈黙が降りた。
ヒビキの本名を聞いた時から何となく予想はしていたけれど。
まさかこんなところにいるはずがないと思っていたから。
「……名前、言えないはずよね。」
どうやら気が付いたようで、アリアは心底呆れたように2人を交互に見た。
「オーブの代表とプラントの指導者がこんな所に居たら誰だって驚くわよね。」
世界を導くような、世界の真ん中にいる2人が。
国内では大きい方とはいえ、こんな辺鄙な砂漠の町に揃って居るなんて。
「…君は驚かないんだ?」
「なんとなく分かってたもの。2人揃うとオーラが違うわ。」
「オーラ?」
アリアの言葉にキラもアスランも首を傾げる。
「近づき難い感じかしら? …ちょっと違う意味も入ってるけど。」
「そう、かな?」
「片翼って言うのかしら? 2人でいるのが自然な気がして、誰も敵わない、そんな感じがする
のよ。」
初めて揃った姿を見た私でもそう思うほど。
今までのヒビキも嘘じゃないんだと思う。
でも、彼といる今の方がずっと彼らしい気がして。
だって、私といる時のヒビキはあんな顔しない。
いつも少し哀しそうに、消えそうなくらい儚げな笑顔で私を見ていたから。
「ヒビキ、戻りなさい。翼は両方揃わないと飛べないわ。」
「え、でも」
驚く彼の言葉を笑顔で遮る。
「私は心配要らないから。」
彼が私といるのは私のためだけれど。
彼の幸せはここにはない。それは分かるわ。
だからなおさらにこっと笑う。心配させまいと。
「今日は貴方も家に泊まると良いわ。話したいこともあるでしょう?」
今度はアスランに向かって、もう1度微笑んで言った。
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管:アスラン、今回は大人しいね。
アス:…足りない…(言いつつキラに抱きつく)
管:(やはりか…) ―――キラ君、抵抗しようよ……
キラ:え、でも、僕 別に嫌じゃないし…
アス:キラ…v(さらにぎゅっと)
管:もう放っておこうか…
アリ:今回テンション低いわね。
管:いや、なんかもうね。頭使いすぎた。
アリ:でも肝心の理由がまだのようだけど?
管:だから さらに疲れてるんだって。
アリ:フーン? じゃあもう少し続くのね。
管:…そういえば。今回貴女の秘密が少し。(アスランとキラはすでに無視)
アリ:ま、そう大したことでもないけどね。って さらに話広げてどうするの?
管:うん、ちょっと後悔。
アリ:私としてはまだ出番があるってことだから嬉しいけど。
アリ:…ところであの2人はいつまであのままなの?
管:気が済むまで放っといて良いんじゃない? あ、お茶飲む?
アリ:ヒビキが嫌がらないのが意外だわ… ええ、貰うわ(カップを受け取る)
管:私も思う。おっ このクッキー美味しい。
アリ:1ヶ月はヒビキにも長かったってことかしら? 美味しい?ならまた作るわね。
管:だろうね。楽しみにしてるv
(2重会話するなとツッコむ人間もいないのでそのまま話は続く…)
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