>--scene.01:欲しいものは君だけだったから--<




「キラ。」

 シャワー後 ベッドに腰掛けてくつろいでいる時に、突然扉が遠慮なく開かれる。
 けれど特に驚くこともなく キラは彼を視線で出迎えた。

 ちなみに軍支給のアンダーウェアでは暑いので、今の格好はタンクトップとスパッツ。
 それでも気にしないのは相手が相手だからだ。
 他の人間だったら勝手に入ることすら許していない。当然だ。


「アスラン、仕事終わったの? だったら明日も早―――」

 …いんだから と、最後まで言う前に、近付いた彼にギュッと抱きしめられる。
 屈む形でそうされたから、重い と思ったけれど。力はさらに強められるだけで、仕方なく腕
 を背中に回して あやすようにポンポンと叩いてやった。

「……もう戻って寝た方が良いと思うよ?」

 聞こえたのか聞こえていないのか。はたまた聞く気がなかったのか。
 彼から返事は返ってこない。
 何なんだと思いつつも 言葉が返ってくるまでしばらく待った。



「……明日から本国に戻る。」
 重い沈黙の後で、囁くように耳元で呟かれる。
「うん、分かってるよ。……だからここに来たの?」
「―――あぁ。」
「そっか…」

 なんだ、寂しかったのか と。
 知らず入っていた肩の力が抜けた。

 今回の急な収集はアスランだけをプラントに帰国させるもので、キラ以下 隊の者は全員がこ
 こ、カーペンタリア基地に残された。
 1週間ほどで戻ってこれるが、2人が離れるのはかなり久々のことで。
 もちろんキラの方も寂しくないわけではなかったけれど、アスランがいない間は隊を任される
 身でもあったし 基地内にはイザークの隊もいたから、明日からは忙しくなるだろうと 意識は
 そっちに持って行かれていたのだ。



 腕の力が緩められて、翡翠の瞳とかち合う。
 2人の間に特に会話はなく。ただ 互いにくすりと微笑んで、自然と目を閉じた。


 甘いキスに酔いしれる。
 その度に過ぎる桃色の影と 罪悪感の胸の痛みには気づかないふりをして。

 今 この時だけは、彼は自分だけのものだと、、

 思う、愚かな自分を嗤って。



 啄むようなキスを幾度となく交わしながら、キラの身体が優しくベッドに横たえられた。
「キラ…」
 キスはだんだん深くなって、こじ開けられた口内に舌が入り込んできて絡め取られる。
 耳に届く水音に煽られ 身体が熱く感じ始めて。

 彼の手が素肌に触れ、脇腹を撫でるようにあがってくる。
 ゾクゾクと背筋が震え、快感の波に流されそうになったところで―――、

 キラは はたと我に返った。


「ん…んーっ」
 背中に回した腕でどんどんと 力の限り彼の背中を叩く。
 今の状態ではそう力は入らなかったけれど、それでもありったけの力で。
 最初は無視してコトを進めようとしたアスランも、あまりのしつこさにとうとう降参した。

「…なんだ?」
 どこか不満そうな彼を、キラはキッと睨み上げる。
 今回の場合、絶対自分が正しいのだ。文句を言われる謂れはない。
「今日が何の日か、知ってるよね?」
 ―――"危険日"。そう言外に伝えれば落ちる沈黙。
「……。あぁ。」
 今思い出したとでもいうような返事の後、こっそり舌打ちされ、はぁ とキラは深く息を吐い
 た。


 絶対知っててやっているのだ、彼は。
 人のアレの周期を熟知しているのはどうかと思うが、相手は幼馴染で恋人。
 10年以上も一緒にいれば、そしてそういう関係も持っていれば。自然と知れてしまうもの。

 ただ、それを当たり前だと自分も認識している辺り 慣れとは怖いものだと思う。


「アスラン…」
 動かない彼を呆れ顔で見る。
「…分かってる。」
 自分に言い聞かせるように呟くと、アスランは乗っかっていた身体をずらした。
 それでも表情には渋々というのが伺えて。

 ピルでも飲んでいればこういう時は良いのだろうけど、そこまでの負担はかけたくないと拒否
 したのはアスランの方。
 代わりに 危険日は手を出さないのが暗黙のルールとなっていた。
 だからこれまでアスランが無理強いをしたことはなくて。
 今回も引いてくれることはちゃんと分かっていたからはっきり言ったのだ。


「…じゃあ本当に一緒に寝るだけ。それなら構わないだろう?」
 隣に寝転がって、身を起こしたキラと入れ替わったアスランは弱々しい瞳で見上げてくる。
 それがわざとらしいのは分かっている。分かっているんだけれど。

 それに僕が弱いの知ってるんだから…っ

「……良いよ。」
 ため息ひとつの後で了承の意を告げる。
 途端にけろりとして満足そうに笑うのがなんだかとても癪だけれど。
「じゃあもうおやすみっ」
 視線から逃げるように背を向けて潜り込むと すかさず腰を引き寄せられた。
 ぴたりと密着してくる体に反射的に身を強ばらせる。

「おやすみ、キラ。」

 後ろ頭に優しいキス一つ。
 高鳴る動悸はまだおさまらないけれど、よく知っている人肌は心地が良くて 次第に意識はま
 どろみの中に沈んでいく。

 今夜は優しい夢が見れるかもしれない…

 そう思いながらキラはゆっくり瞼を閉じた。








 それからどれぐらい経ったのかは分からない。

「…っ なん…っ!?」
 突然とんでもないところに触れられて、うとうとしていた頭が一気に覚醒した。
「ちょ、どこ触って…!」
 真っ赤になってキラは彼の手を押さえる。
 掴む手は震えていてあまり力も入っていないけれど。これはせめてもの意思表示だ。

「…キラ…」
「…っ や…… 耳元で囁かないで…っ」
 鼓膜を刺激する濡れた感触と水音。
 熱い吐息と舌に 耳から犯されていく感覚を覚えた。
「アスラン…っ!」
「なに?」
 弱い抵抗をものともしない彼の手は 服の上から焦らすようにゆっくりと太ももの内側を撫で
 あげ、快楽を知る身体は震えだす。
 元々寝る為の薄い生地、刺激を与える彼にとっては何の妨げにもならない。
「〜〜〜っっ」
 力が抜けて抵抗することさえもできなくなると、コロンと仰向けに返されて 再び体重をかけ
 られた。


「…待っ…… っん…」
 キラの言葉は届かず、首筋を辿るように降りてきた唇が鎖骨で留まり紅い痕を刻む。
 するりと入り込んだ手が腰から肌を滑るようになぞり、胸の膨らみまで辿り着くと それを優
 しく包み込んだ。
「っ …ぁん…っ」
 形の良いそれを揉みしだきながら、時折人差し指の爪で先を引っ掻いたり軽く摘んでみたり。
 その度にあがる高く甘い声はますます彼の熱を煽る。
「止められそうにないな……」
「!? アス… っ!」
 キラがハッと気づいた時にはもう手遅れ。
 器用に片手でブラごとタンクトップを取り去って、現れた白い肌に痕を増やしていった。



「…ね、っダ…メ……っ アス…ゃ…っ……」
「ダメじゃないだろ? キラの身体は。」
 すでに衣服は全て取り去られ、空いた片方の手が不意に秘部に触れる。
「ちゃんと濡れてるよ、ココ。」
「そ、んな…っ でも、きょ…う…っあん…っ!」
 キラの意志も反論もアスランは受け付ける気がないようだ。
 突然指を突き入れられ、瞬間 身体がびくりとはねあがった。
 くちゅりと淫猥な音を立て、慣らされた身体は簡単にそれを飲み込んでいく。
「ほら、もう2本目。」
「……っ」
 クスクスと楽しげなアスランの声が聞こえる。
 生々しい音に耳を塞ぎたくなるけれど、そんなことができるはずもなくて。
 逃げ打つ腰は逆に引き寄せられ、中で動き出した指に一層高い声が上がった。



「―――キラ。俺の子産んでくれる?」
「…え…?」
 意識が別の方に持っていかれているせいかもしれないが、彼が何を言っているのか全く理解で
 きなかった。
 けれど彼にとってはそこは問題ではないらしい。気にした様子もなく続ける。
「俺はキラ似の可愛い女の子が良い。」
 恥ずかしげもなくそんなことを言って 頬にキスを落とす。
「何 言って…… ぁ…っ」
 中でバラバラに動いていた指が突然止まる。
 さらにその指を引き抜かれて 感じた喪失感に 認めたくないけれど僅かな寂しさを覚えた。
「ね、産んで?」
 けれど、指の代わりにあてがわれたものの正体を知ってキラは青褪める。
「…っ まさか… ちょ、ヤメ…―――っ!!」

 彼女の言葉は彼に届かなかったのか、あえて聞かなかったことにされたのか。
 遠慮の欠片も見せず一気に貫かれて 痛みに言葉を失った。


 出生率が下がっているとはいえ、妊娠の可能性はゼロではない。
 そしてキラは同年代では珍しい1世代目だ。
 今日は危険日で、アスランは絶対に避妊をしてくれない、となれば。


「あ… アス……っ ぁん…っ」
 抵抗の声も嬌声に変えられた。
 背中に立てた爪は相手を余計に煽るだけ。
「何も考えなくて良い。俺だけを感じていて。」
「や、あぁん…っ」
 激しくなる動きに 理性も崩されていく。
 何も考えられなくなった後は ただ快楽に流されていくだけ。
「キラ…」
「ひ ぁんっ…!」
 指では届かない奥を突かれ、背中がしなる。

「…何回ヤったら 子どもができると思う?」

 笑みを含んだアスランの言葉は もう頭に入ってこなかった。

「…ぁ……ああぁ―――っ!!」




「キラが俺の子を産んでくれたら、俺はキラのものになれるのに……」
 現実と夢の狭間のような 朦朧とした意識の中で彼の声を聞いた。

 そうなれば良いのに…

 思ってしまった自分は本当に愚か。
 浅ましい己の昏い心に 吐き気すら覚えた。




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ロイアイエロ書いたときにもうエロは書かないと言っていたはずなのにね!
男女エロなので同人的に萌えるのかは不明です。
てゆーか あまり読み返したくないです… 恥ずかしすぎて……
軽く流してくれた方が嬉しいですー…



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