選んだ道の先 −≪22≫
ふと気づいた眩しさで、意識が不意に浮上する。
薄暗い室内がやけに明るいのは 窓から差し込む月明かりのせい。
僕 どれくらい眠ったんだろう?
「夜中…?」
起き上がり、窓の外を見る。
少し欠けた月が 水面に白い光の道を作っていた。
時間の感覚がよく分からない。
月を見て時間を知ることは覚えたけれど、今はまだ考えるほど頭が回っていなかった。
そして、それほど熟睡した自分に違和感を覚える。
「変だな… アスラン いないの、に…」
ふと感じた人の気配。
そちらを見て思わず息を飲んだ。
月明かりを吸って輝く闇色の髪。その光で俯いた白い肌が光っている。
前髪に隠れて表情はよく見えないけれど。
足と腕を組んで、いすに座ったまま、聞こえるのは小さく規則正しい息遣い。
「アスラン… どうして…?」
いっぱい傷つけたはず。
だから君は部屋を出て行ったはずなのに。
何故ここにいるんだろう。
「ねぇ… どうしてそんなに優しいの 君は…」
深い眠りの彼にキラの言葉は届かない。
「―――風邪引くよ?」
座ったまま寝れる君は器用だと思うけど。
苦笑いしつつ 自分のシーツの一つを掴んで、―――静かに立ち上がる。
足音を殺して起こさないように近づき、ふわりと彼を包み込ませて。
肩にかけた上からそっと、触れる程度に腕を回した。
広い肩、僕とは比べようもないね。
いつの間にこんなに差がついたんだろう。
頬に当たる彼の髪は少し冷たくて。
でも遠い記憶のまま、その藍髪はやっぱり柔らかくて。
「ウソついててごめん…」
ぽつりと呟く。
それは聞こえない彼への懺悔。
「本当はもう立ち上がれるんだ…」
さっきは立ち眩んで転けただけで。
誰も知らないけど、言うつもりもないけど。
言わないのは、それすらもどちらでも構わないから。
―――と、君が心配するから。
でもそんな無茶なことはしないよ。
だって君は止めるだろう?
それで君を巻き込んだりしたくない。
「ごめんね…」
君の優しさを裏切るよ。
どんなに傷つけても。
辛いよ。
辛い、けど…
「迷惑をかけたくないんだ…」
君はその優しさで僕を守るから。
こんな僕のために、幸せを壊したりしないで。
ねぇ だから僕を逝かせて。
「好きだよ… こんな時にしか言えないけど…」
身を離して、今度は彼の顔に触れた。
かかる髪を上げると彼の秀麗な顔が見える。
今は見えない緑瞳に見つめられるのが好きだった。
光の下で見るそれはとても澄んでて深くて、どんな宝石よりキレイで。
僕だけが見れた 世界でただ一つの、至上の宝物だった。
今その目はいつも哀しげに曇ってる。
でも僕は止めない。
君が僕を嫌うまで。その優しさを消してくれるまで。
その度に胸が痛むけど…
「早く僕から離れて…」
ポロポロと瞳から滴が零れる。
もうこれ以上悲しまなくて良いように。
傷ついてまで優しくしてくれなくて良い。
「君の幸せを願うよ。だから、僕を忘れて―――」
月の僕はもういない。
君を想う気持ち以外は、こんなにも 変わってしまった僕だから…
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管:立てたんだね。いつ頃から?
キ:えーと、わりと最近。だからそのままアスランには手伝ってもらってる。
管:何を??
キ:浴室まで連れてってもらったりとか。
管:!!?
ア:キラ。そういうことは人に言っちゃダメだって。
キ:…何で?
ア:誤解する人がいるから。
管:誤解、なの?
ア:別に一緒に入るわけじゃないし。
管:(当たり前だ!) …じゃあどこまでなワケ?
キ:服脱いで、湯船に入れてくれるところまで、だよね。
ア:背中流してあげるって言うのにキラが嫌がるから。
キ:当たり前だよっ そこまで迷惑かけれない。
ア:迷惑じゃないのに…
管:そうよ。そんなことさせたらキラが危ないわ。
キ:??
ア:変なことを吹き込まないでくれ。(キラの耳を塞ぐ)
管:事実じゃないの。
ア:俺はそこまでがっついた性格じゃない。
管:…あっちのアスランはそうかもしれないけどねぇ。
ア:どういう意味だ。
管:そのままの意味。
キ:?? アスラン、聞こえないよ〜?
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