選んだ道の先 −≪21≫


「?」
 中で聞こえた物音にアスランは首を傾げる。
 何かが落ちたような音だった。


「キラ?」
 扉が開くと、ベッド脇に座り込んでいるキラの姿。
 咄嗟に掴んだのか、シーツも一緒にずり落ちていた。
 きっと立とうとして落ちたのだろう。

「…何してるんだ?」
 少し呆れたように言って 起き上がらせようとキラの腕を掴む。
 …いや、掴んだつもりだった。
 けれど、触れた瞬間にキラは強くその手を払い除ける。
 じん、とその場所が痺れた。

「要らない。放っといて。」
 ふいっと目を逸らすその言葉の意味は拒絶。

「……っ」
 それにカッとなった。
 暴れるのもお構いなしに無理矢理抱き上げると、ベッドの上に けれど優しく下ろす。
「何す…っ!!」

 こんな 細い腕で…

 拒まれたことよりその頑なさに苛立った。
 暴れるキラの手首を掴んで押さえ付ければ 簡単に拘束できてしまう。

「…離せ!」

 たったこれだけのことでもう息が上がっている。
 嘘だと思いたかった。
 同じ年のはず、昔はほぼ互角だったはずなのに。
 いつの間にこんなに差がついた?
 これは軍人だから、そうじゃないからなんてレベルじゃない。
 俺はほとんど力を入れてないんだ。

「だったらもっと力を付けろ。」
「…っ!」
 キラが力を加えても、やはり微動だにしなくて。
 暴れれば暴れるほど 互いに力の差を感じた。


「―――お前は分かってないだろう?」
 掴んだ手に力がこもる。
 キラが痛そうに顔を歪めても緩めなかった。
 同じくらい俺の心は痛いんだ。
 それを知って欲しかった。
 お前に拒まれることがどれほど苦しいか。
 気づいて欲しかったんだ。

「お前を失えば俺は狂う。」
 脅しじゃない。
 お前がいない世界に何の意味がある。
「それでもお前は… 俺を置いて逝くのか?」
「っ!」
 傷ついた、そんな瞳だった。
 痛いのは俺のはず。
 けれどキラの方が何倍も辛そうな顔をしていた。

「出て行って! 僕に構わないでよ…っ!」
 ただ一つ変わらない強い眼差しで睨み付ける。
 そこにはどこか必死な様子が見て取れた。
 痛みを堪えるような、自分すら傷つけているような。

 ―――何かが、見えた気がした。
 キラの言葉の意味が、表情の理由が、繋がろうとしている。
 けれどそれを理解するには まだ心の準備が足りなかった。
 涙が出そうなほど胸が痛い。


「…分かった。」
 この目を見ていられない。
 跡が残りそうなほど強く握り締めていた手を解く。
 案の定赤くなっている彼の手首に罪悪感を感じたけれど。
 それ以上にキラを見ているのが辛くて。

「帰るよ。」

 逸らして、その表情を隠して。
 キラが今どんな表情をしているかなんて分からない。

 そのまま逃げるようにその部屋を後にした。
 キラは、何も言わなかった。







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管:…押し倒してんじゃないよ。
ア:暴れるのを押さえ込んだだけだ。
管:ぬけぬけと…っ
ア:あれでも抑えた方だ。
管:当たり前。それ以上は許しません。
ア:偉そうだな。
管:当然でしょ。君らが幸せになるかも別れるのかも私次第なんだから。
ア:舶ハれるなんて認めない!
管:どうだか。
ア:! 待て! それはどういう意味だ!?
管:管理人は気まぐれさんだから〜♪
ア:…まぁ良いさ。俺とキラは結ばれる運命なんだ。(強がり)
管:ハイハイ。(半分無視)



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