選んだ道の先 −≪20≫
「…今の彼に必要なのは身体面ではなく精神面での治療だな。」
ふぅ と息を吐いて、20代前半の白衣の青年はカルテを机に放り投げた。
胸のプレートに書かれた名は"ユーリ=エレクルト"。
若いがその腕はかなりのもので、またその性格から相談を持ちかけられることも多い。
アスランはキラのことを通して彼とよく話すようになり、お互い砕けた雰囲気で会話をする程まで
になった。
相手が"赤"でも全く気にしない彼を、アスランも気に入ったようだ。
「後は自力で食えるようになれば完璧なんだがな。」
言ってちらりと前を見やれば 相手は眉間に皺を寄せて俯いている。
許せないのは相手か自分か。
ユーリはこっそり苦笑いを漏らす。
睡眠不足は目の前に座る藍髪の少年のおかげですっかり解消。
けれど 相変わらず何も口に入れようとしない。
栄養は足りているとはいえ、このままではずっと点滴に繋がれたままの生活になってしまう。
医者として それは健康とは言えない。
―――心的要因が大きいことは自分が診断を下したのだからよく分かっている。
戦場で精神を病む人間は多いから そちらの治療法も十分心得てはいるのだが。
「しかし あそこまで拒まれると俺にもどうしようもないなぁ。」
お手上げだ、といった風にそのままの仕種をする。
"必要無い"と言われてしまってはこちらとしては手の出しようもない。
「アイツは昔から頑固だから…」
幼馴染みという肩書きを持つ彼には諦めが入っているように見えた。
「人の気も知らないで… いつだってそうだ…」
人の意見なんか聞きはしない。
俺の気持ちを汲もうなんて考えない。
いつだって自分勝手で人を振り回して。
それに気づきもしない。
そして今度は俺を置いて逝こうというのか?
お前はどこまで俺を困らせる?
「…珍しい人だな、貴方は。」
ふと顔を上げてユーリを見る。
すると相手は少し驚いたような顔をしていた。
「そうか?」
「随分親身になってくれるな、と。」
今診ている相手は地球軍の人間だ。普通はもっと違う態度をとるものだと思う。
けれど彼は他と変わらず真剣に相手を考えている。
「俺にとって病人は誰でも平等だ。それが敵だろうと―――ナチュラルだろうとな。」
「本当に変わっている。」
「…確かに。こんな考え方の人間が軍医になるのはおかしいかもしれないな。」
野戦病院に行った方がまだ向いているのかもしれない。
言ってユーリは肩を竦めて笑う。
「でもだから信頼も置けるんだ。」
だからキラのことも話せて、俺も心を許せた。
「あー…」
照れたのか、ユーリは頬を掻きながらあさっての方向を向く。
「彼の場合は特に放っておけないというか、な。」
そうしてしばらく視線を彷徨わせていたが。
ふと 突然真面目な顔になる。
「―――俺はな、自ら命を投げ捨てようとするヤツは許せないんだ。どんなに生きたくても助けら
れない命もある。特に、こんな戦場では。」
苦い表情は今までそれを何度も経験したからだろうか。
「せっかく助かった命なんだ。もっと大切にしてもらいたいものだ。」
「俺も―――…」
できれば本人の意思で生きようと思ってもらいたい。
絶望するにはまだ早い。お前はまだ生きられる。
「でも、決めたらあいつは絶対曲げないんだ…」
「死なせる気はないんだろう?」
「あぁ…」
言いつつも何か迷いがあるような、不安そうな面持ちだ。
「怖いな。」
ぽつりと漏らした呟きに アスランの肩が僅かに揺れる。
「恐らく 彼は処刑されないだろう…」
アスラン達の望みは叶うだろう。
けれどそれは同時にキラの望みが叶わないということ。
「もうすぐ死ねると思っているからギリギリ保てている 精神がどうなるか…」
2人の懸念は同じだ。
アスランもただ黙って言葉を聞く。
その手は力を込め過ぎて白い。
「―――お前が救え。」
弾かれ顔を上げたアスランに、強い眼差しを向けた。
「その時必要なのは支えだ。」
「でも 俺は…」
まだ何か迷っているアスランを正面から見据え、ユーリは一段低めた声で続ける。
「この際相手の気持ちは二の次だ。"お前が"死なせたくないんだろう? だったら無理矢理にでも留
めろ。」
「……」
「それがお前の役目だ。彼に1番近いのはお前なんだからな。」
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管:オリキャラさんです。
ユーリ(以下ユ):どーも。
管:名前を紹介して。
ユ:こんにちはお嬢さん方。俺の名前はユーリ、歳は24だ。趣味は紅茶収集。
最近は中国茶にも興味がある。特技は女性の…
管:ストップ。誰もそこまで聞いてないってば。
ユ:何を言う。全国の俺を待つお嬢さん方の為に俺は。
管:いないっつの。…君、そんなキャラだったっけ?
ユ:アスランも似たようなものじゃないか。
管:そうね… ここのアスランは変態だったわね。
ア:失礼な。俺はキラ馬鹿なだけだ。
管:じゃあ いい加減抱きついてるその腕を離しなさい。
ア:嫌だ。
管:…オイ。
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