選んだ道の先 −≪19≫


 ―――好きだから、だよ。

 アスランに気持ちを伝えない理由を尋ねた時に言われた言葉。
 彼はアスランの中に自分が残ることを厭う。
 忘れてもらいたいと言った。

 本当は好きなのに、嫌っているように見せようとする。
 好きだからこそ嫌われたい。
 見ている方が痛々しい その努力。
 アスランを突き放して、同時に自分をも傷つけて。

 どうして こんな…っ!


「アスラン、あの…っ」
「? どうした ニコル?」
 不思議そうにアスランが見上げてくる。
「……ッ!」
 言おうとして、その言葉を飲み込んだ。
 アスランの澄んだ瞳を見た途端、同時に浮かんだ儚げな笑顔と紫の瞳。
 今は閉じられている、彼の傍らに眠る人の。

 言ってはいけない。
 自分が言えば、確かに誤解は解けるけれど。
 それではいけない。
 これは キラさん自身の意思で、アスランに言わなければいけないこと。
 他人が介入して良い問題じゃない。


「あの……その、アスランは、キラさんのことをどう思っているんですか?」
 とっさに置き換えた言葉は、答えが分かりきったものだった。
 でも 実は1度も聞いたことがなかった問い。
 アスランが見せる彼への執着の理由、それらはみんな憶測で。
 本当はどう思っているか、実はこれまで尋ねようとしたこともなかった。

「―――1番大切な人、誰よりも守りたい。それがキラだよ。」
 穏やかで優しい、それだけで気持ちが伝わる声だった。

「ずっと好きだった、愛していた。片想いだと分かっていてもずっと想い続けていた。」
 月にいた時から。
 別れてプラントへ行った後も、1日たりとも忘れたことは無かった。
 いつかきっと迎えに行くと、心に誓って過ごしてきた。
「たとえ嫌われても、俺はキラを嫌いになんてなれない…」

 拒絶されても どんな冷たい言葉を浴びせられても。
 この気持ちだけは変わらない。

 だから今、俺はここにいる。



「―――アスラン。僕はキラさんの寝顔を見たことはありません。」
「え?」
 突然言われた言葉に、アスランは訝しげに顔を上げる。
 何を言われたのか、その言葉の意味が分からない。
「いつ寝ているのかと悩んだこともあるくらいです。」
 彼の表情を受け止めつつ ニコルは苦笑いを漏らして言葉を続けた。

 いつも窓の外を眺めて。
 いつ来ても、いつ見ても、それは同じで。
 声に応えてくれなければ 精巧に作られた人形かと思わせるほどに。
 彼は常にここに座っていた。

「アスランの前だからでしょう? 貴方が居るからキラさんは眠れるんだと思います。」

 過度のストレス、栄養失調、―――そして 睡眠不足。
 医師の診断の中にあった項目。

 アスランがプラントに戻っている間、彼は睡眠薬なしでは眠れなかった。
 しかし、たとえ睡眠薬が効いていても人前では眠れなかった。
 気配がすればすぐ目覚めてしまう。
 それは長い間張り詰めていた緊張が今だ解けていない証拠で。
 彼があそこにいた時どんな状況だったのか、どんな生活をしていたのか、それだけでも否応無しに
 理解させられる。

 …けれど今は。
 それを使った形跡はない。


「もっと自分に自信を持って下さい。…少し、考え方を変えてみて下さい。」

 そして気づいて下さい、キラさんの本当の心に。
 人に言われてじゃなく自分で見つけて下さい。

「僕はキラさんを助けたい。でも、キラさんを本当の意味で救えるのはアスランだけだと思います
 から。」
 そう言ってニコルはにこりと優しく微笑んだ。







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管:(…いい加減うっとおしいなぁ)←前回から隅にいるアスランを見ている

キ:あー よく寝た。
    …ってアスラン。何いじけんてんの?(後ろから覗き込む)
ア:キラっ 俺はお前が好きだ!(突然キラの手を取り真剣な目で)
キ:…? うん。僕もだよ?
ア:vvv キラ!!(抱きつき)
キ:ア、アスランっ!?(慌て)
ア:きっと幸せにするから!
キ:? アスラン??

管:…アレは意味分かってると思う?
ニ:たぶん というか確実に分かってないと思います。
管:だよね〜…



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