選んだ道の先 −≪17≫
今までイザークが座っていた椅子にアスランは腰掛ける。
キラは別に何を言うでもなく視線を巡らせていたが、最後はやはり空へと向いていた。
キラはもう昔みたいには笑わない。
微笑むくらいはしてくれるけれど、それでもどこか影があって。
屈託無く笑う姿はもう見れない。
―――当たり前だと思うけれど。
お前の意思に反してこんな所に閉じ込めて。
お前が望むことと 逆のことをしようとして。
傍に居てくれれば それで良い。
無理に心が欲しいとは思わない。
だけど。
お前の、あの頃の笑顔が見れないのは、とても哀しい。
…その資格が俺には無いのも、分かっているけれど。
「イザークと、何か話してた?」
いつものようにニッコリ笑って話しかける。
話し掛ければキラはこちらを振り向いてくれる。
キラはやはり振り向いて、アスランの瞳を見ながら首を振った。
「何も。」
「……え?」
アスランの笑顔が固まってしまったのに気にした風でもなく、キラはただその大きな紫の瞳で
彼を見ている。
「だから何も。」
「何もって…」
じゃあ何の為にイザークはここに来ていたのだろうか。
元々 愛想よく話す性格でもないけれど。
意味が分からないといった風に首を傾げる。
キラはアスランが言いたいことが分かったのか、くすりと悪意の無い笑みを浮かべた。
「イザークさん、ずっと本読んでるだけだから。僕も話すことないし。」
ただお互い黙ったまま 思い思いの事をするだけ。
異様なほど静かな、沈黙の時間。
最初は戸惑ったけれど、いつしかそれも心地良いと思うようになった。
アスランとは違うけれど 好意が持てる。
安心できる人だった。
「アスランが居ないから寂しがってると思われたのかな…」
「…そんな気が回る奴じゃなかったと思うが。」
ポツリと呟いた言葉に対して、アスランは眉を顰めて答える。
「そうかな。優しい人だよ。」
他の人達も、…君も。
そこは言わなかった。
「………」
本当は気づいている。イザークがここにいた理由。
確信があるわけではないが、何となく分かった。
―――キラの監視だ。
"死ぬ気だ"
そう彼は言った。
俺の代わりに見張っていてくれたのだろう。
どうして彼がそこまでしてくれるのか、その理由は分からない。
…いや、薄々と感づいてはいるが。
"目を離すな"
…言われなくても分かっている。キラを失いたくはない。
もう手離さないと決めたのだから。
「ねぇ アスラン。」
考え込む彼を覗き込むようにキラはじっとこっちを見ている。
頭の中のものを全部振り払って、アスランは笑顔を向けた。
「何?」
「聞きたいことがあるんだけど…」
そして次に彼が見せたのは、あの"キラ"の表情だった。
冷たく微笑うわけではなかったけれど 目を背けたくなった。
けれど逸らすことはできない。
自分が魅入られた紫の瞳がそうさせなかった。
真っ直ぐに向けられるアメジスト色の瞳には、動揺に揺れる自分の姿が映っている。
無理に向けた笑顔はいつの間にか消え去っていた。
「…僕の処分が決まるのはいつ?」
「っ!」
聞きたくなかった言葉。
さっと、アスランの血の気が引いた。
処分だなんて、言うな…
気づかれないよう拳を握り締めて、それでも冷静を装う。
「―――そんなこと お前は気にしなくて良い。」
絞り出した声は震えていなかっただろうか。
「僕のことだよ。知る権利はある。」
キラはアスランを逃がさない。
濁しても答えを得るまで瞳を逸らさせない。
「……審議は10日後だ。」
「そう。わかった。」
観念して口を開けば、キラはぽつんとそれだけ言って視線を外した。
あと10日しかないんだ…
それまでの間に、僕は君に…
――― そう、僕を忘れてもらう為に。
優しい君は どこまでも優しいから。
僕に優しさは要らない。
君には幸せになってもらいたいから。
君の中に、僕は要らない。
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管:アスランの前では笑わないんだ?
キ:笑ってるよ?
ア:アレは笑顔とは言わない… 昔はあんな無邪気な笑顔だったのに…
あの笑顔で「あすらんv」なんて言われた時はもう…!
管:トリップせんで戻ってこーい。って無理か。
キ:僕、笑ってない…?
管:笑ってないというか、笑顔が黒い。
ア:(戻ってきた)あの笑顔も艶があって良いんだけどね… でもキラはもっと…っ
管:アスランの趣味は聞いてないから(ツッコミ)
キ:黒い笑顔ってなんだろう…?
管:あーゆーのを言うんだよ。(ニコルを指す)
ニ:何か言いましたか?(笑顔)
管:何でもないv(笑顔)
キ:…なんとなく分かったかも……
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