選んだ道の先 −≪12≫


「―――報われないよな、アイツも。」
 初めて見た時のやり取りを知っているディアッカは苦笑いを浮かべた。
 あんなに必死になって助けようとしているのに、当の本人はすでに死ぬ気だ。
 しかも本気だから怖い。
「え?」
 それにキラは不思議そうな顔をする。

「…これだけ大切にされてて 気づいてないのか?」
 まさか。と思う。
 知っていて拒絶するのも残酷だが、知らないというのも十分残酷だ。
「……何を?」
 それでもなおキラは首を傾げる。


「…この辺に人の気配が無いのは何故だか分かるか?」
 唐突に聞いてみた。
 もちろんそれがキラに分かるはずもない。
 ディアッカも答えを期待してはいなかった。

「この一角は俺達専用だからさ。赤を着る者と… 他は隊長しか入れない。」
 本当はアイツが同室を希望していたというのは黙っておく。
 アスランにとってキラは それだけ目を離したくない、傍に居て欲しい存在。
「ザフト勧誘の交換条件だとさ。」
 全てをニコルから聞いた。俺もイザークも。
 その上で会えと言った。

「アイツはお前を守ろうと必死なんだよ。」
「え……?」
 キラの瞳がゆっくりと驚きで見開かれる。
「誰にだって分かるさ。それだけお前は"大切なもの"なんだ。」
 ディアッカは言いながら 饒舌な自分に驚いていた。

 何故こんなことを言っている?
 何故 俺はアスランを援護している?
 アイツのことは嫌いってわけじゃない。
 でも 助けてやるほど好きでもない。
 なのに 何故か言わなくてはならない気がして。


「でも… 僕は……」

 そんなコト言われても困るよ…
 僕は君に嫌われようとしているのに。
 こんなにも君を傷つけているのに。
 何故君はそんなに優しいの…?
 苦しいよ。
 本当は君の腕に飛び込みたい。その腕に抱かれたい。
 だけどダメなんだ。
 僕は君の傍にはいられない。

「ダメだよ… 僕は死ぬ為にここに来たんだから…」


 下を向くキラの頭にポンと優しく手を置く。
「そう 自分を追いつめるな。」
 滑稽だと思えるほど優しい言葉が自分から出る。
 でも言わずにはいられなかった。
「優しいですね。」
 くすりとキラが笑って、ディアッカは驚いたような表情をした。

 本当に。
 貴方もニコルさんも、アスランも…


「でも、僕はもうすぐ死ぬんですよ?」
 僕の願いは叶う。
 一瞬ディアッカは言葉を失った。

「…アイツがどんなに力を尽くしてもか?」
 その言葉にキラはとても切なそうな表情を返す。
 泣いてしまうのか、と思ってしまうくらいに。
「―――アスランは優しすぎる。僕なんか 放っておいても良いのに…」
「――――…」

 気づいてないのか?
 その"優しさ"はお前だけに向けられているということ。
 アイツが優しいのはお前だから、そう言いたい気もする。
 …言っても認めないんだろうが。

 彼は戦いの場に居るにはあまりに優しく、繊細すぎた。
 自ら死を望むこと。
 そう考えるしかなかった悲しさ。
 彼はそこまで追いつめられている。

 …ニコルが言った意味が分かった気がした。


「―――とにかく少しでもいいから食え。俺がニコルに怒られる。」
 おどけて言うと キラは少し笑った。
 何かを含んだものじゃなくて、それは純粋なもの。

「……うん。」
 今度は素直に頷いた。







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キ:…さっき何か聞こえなかった?(周りを見渡す)
ディ:確かに… なんか叫ぶような…
管:気のせい気のせい♪
キ&ディ:…?

管:キラにはアスランの気持ち、伝わっていないみたいだけど?
ディ:…もう俺には面倒見きれねぇ(汗)
管:投げやりだね。
ディ:頑ななんだよな。何言っても聞かない。
管:どうするべきだと思う?
ディ:そんなんアスランが自分の気持ちを伝えるしかないだろ?
      なんかそうとう鈍いみたいだし、キラ。
キ:僕、鈍い?
ディ:鈍い鈍い。めちゃくちゃ鈍い。
キ:どの辺が?
ディ:…じゃあ、アスランの「好き」の意味 知ってっか?
キ:…? 友達、じゃないの?
ディ:……(やっぱりか)
管:……(自分と同じとは考えないわけね)




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