選んだ道の先 −≪10≫(回想)
「「「「!!」」」」
スピードを上げたアークエンジェルに4人とも気がつく。
それを追おうとしたバスターの前にストライクが立ち塞がる。
「―――行かせない。」
静かに、キラはそう告げた。
それは捨て身とも言えるものだった。
自分はどうなろうとお構いなしだとでもいう風に、攻撃しようとする機体の前へ飛び出す。
避けずに向かってくれば相手は確かに怯むだろう。
けれど、その 無謀だとしか言えない守り方。
しかし相手は4機、そうでもしない限り後ろを守り通すことはできない。
たとえ死んででもアークエンジェルには向かわせない。
キラはそう誓っていたから。
元より、キラは生きて戻る気など無かった。
ここで果てる気だったのだ。
あのフェンス越しの 他人のような会話。
オーブ領海を出てすぐに始まった戦闘。
分かっていただけに苦しかった。
…君と僕はもう 完全に別の道を歩いている。
近くに居ても、同じ場所に居ても、君の存在は遥か遠く。
僕も君もただ守りたいだけなのに。
その相手が違うだけなのに…
僕と君は殺し合わなくちゃいけない。
それは僕に守るものがある限り絶対に崩されないモノ。
だけど、アークエンジェルがアラスカに入ればもう安心だ。
僕の役目は終わった。
…そう思いたい。
だって、もう疲れてしまったから。
アスランと戦ってまで、守る為に人を殺していかなきゃならない事実。
逃げたいんだ。
解放されたいんだ。
死んでしまえば、もう君と戦わなくて済む。
全ての苦しみから逃れることができる。
…だから、殺して。
―――けれど、その願いは聞き届けられない。
エネルギー切れの警告音。
見えなくなったアークエンジェル。
「終わり、だね…」
ひどく落ち着いた気分で 艦と繋がる回線を切った。
そして デュエルのソードがコクピットを狙ったと思われた瞬間。
キラは全ての抵抗を止めて、目を閉じた。
火花が散る音がして。
一瞬光が周りを包んだけれど。
けれど、キラは生きていた。
狙ったのは脚の方で。
動けなくはなったけれど、自分は生きていた。
衝撃は来たけれど何の痛みも無く、自分の意識はまだはっきりとそこにある。
「え…」
当惑してそっと目を開けると イージスがこの機体を捕まえていた。
『ストライク捕獲成功。帰艦します。』
アスランの声が聞こえる。
捕獲…?
何故だかは分からない。
けれど、僕が生き延びてしまったことは分かる。
「……」
―――否。
もし今生きていても きっと僕は処刑される。
地球軍のパイロット、裏切り者のコーディネイター。
殺されるには充分な肩書き。
「…どちらにしても変わらないから 別に良いかな。」
死ねるなら もう全てがどうだって良い。
…本当は君に殺されたかったけど。
でも良いよ、もう。
僕を解放してくれるなら誰だって良い。
死んで、僕は自由を手に入れる。
君と戦う苦しみから 逃げ出すんだ。
きっと…
やっと…
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管:キラ君、アスランに殺されたかったって本当?
キ:本当。どうせ死ぬならアスランの手で、って思った。
管:今は違う?
キ:そうだね。それじゃアスランが苦しむかなって思い直したりして。
管:死ぬ気には変わりないんだ。
キ:変わらないよ。生きるのはもう辛いから。
管:これからどうなる、とか… 分かってるんだよね?
キ:"裏切り者のコーディネイター"として公開処刑とか。たぶんそうなんだろうな。
別になんだって良いけど。
管:自分のことなのに随分あっさりだよね。
キ:生きるとか死ぬとか… そういう感覚が薄れてるのかも。
きっと、僕の心はもう壊れてるんだろうな…
管:……(汗)
管:(ああもうっ アスラン居ないから誰にも止められん!!)
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