選んだ道の先 −≪09≫(回想)


 4対1、絶対に敵うはずがなかった。
 それでも アークエンジェルには向かわせまいと、キラは1人で立ち向かう。
 他は少佐1人に任せてもアークエンジェルは守り通せる。
 トールの援護もあるし、きっと心配は要らない。
 …けれど。この4機だけは。
 不利だろうとなんだろうと、絶対に近づけさせるものか。


「キラ!」
 そこへ加勢しようとスカイグラスパーが近づく。
 限界に近いスピードで真正面から。
「トール!?」
 キラの驚きの声とほぼ同時に4人の視線もそちらに向いた。
 スカイグラスパーから放たれたミサイルが 1番近かったイージスに向かうけれど。
 それはあっさりと避けられた。
「!」
 元々当たるわけはないと思っていたが、やはり動揺してしまう。
 その一瞬の隙を逃がさず お返しと言わんばかりにデュエルの砲門が一斉に開いた。
「っ!」


 ドガガガガガ!!


「「「「!?」」」」

 目の前で起こった出来事に全員が目を見開く。
 包囲していたはずの機体が いつの間にかそこに居た。
 誰一人 その動きが見えなかった。
 全ての攻撃を、投げ出したストライクの左腕が受け止めたのだ。
 耐え切れず落ちた腕の接合部に火花が散る。

「キラ!?」
「アークエンジェルに戻れ!」
 自分のせいだと思う間もなくキラが叫んだ。
「でも……っ」
「アークエンジェルを守るのが最優先だ! ここは僕1人で食い止めるから!」
 そこに居るのはいつも穏やかなキラじゃなくて。
 これは一体誰なんだろうと トールは思った。

「早く!」
 けれどそんなことを考えている時間を状況はくれない。
「……っ」
 加勢したいと思うけれど。
 破壊されたストライクの左腕を見ると。
 今は逆に重荷になってしまうとわかる。
「…分かった。気をつけろよ!」
 そう言って スカイグラスパーはアークエンジェルの方にその身を翻した。



 そして、キラはアークエンジェルに通信を繋ぐ。
「振り切って下さい!」
「え?」
 突然のことにマリューは驚く。
 他のブリッジメンバーも何を言い出すのかという風な表情をした。
「僕がこの4機を止めていられるうちに!」
「と、止めていられるって…」
 彼は自分で何を言っているのか分かっているのだろうか。
 そんな風に思わずにはいられない言葉。
 それが何を意味するか、彼は自覚しているのだろうか。

「何を… じゃあ 貴方は…」
「僕のことは良いですから 早く!」
 否とは言わせない気迫でキラが言う。
 彼は分かっている。
 分かっていて そう言っている、それは余計に彼女を迷わせた。
「でも…」
 簡単に納得できることではなかった。
 ここで彼を置いていくことなど 甘いと言われても彼女にはできない。
 彼は死ぬ覚悟すらあるようにも見える。
 振り切るということは、敵が追いかけて来れない所まで行くということ。
 その後でストライクが付いて来られる?

 答えは――― NOだ。

 ストライクはすでに左腕を失っている。
 4機を相手にしていて それ以上に無事で居られるはずが無い。
 それを見捨てていくことができるだろうか。

「艦長!」
 下からナタルが叫んだ。
「彼の意思を無駄にするおつもりですか!?」
「っ!」
 彼女が言うことは正論だ。
 だから余計にマリューは言葉を詰まらせた。
 彼がそう覚悟しているのなら、行動は少しでも早く起こした方が良い。
 その方が彼の負担は軽くなる。
 アラスカはすぐそこだ。
 艦を沈めさせるわけにはいかない。
 でも、それは…

「艦長!!」
 ナタルの声が激しくなる。

「―――っ 全力で振り切れ! フラガ少佐、ケーニヒ二等兵には一時帰艦命令を!」







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管理人:9と10は回想なんですが…
        これはキラ視点なので、ザフト組視点は番外をどうぞ。

マリュー:何故CMなの…?
管理人:いや、なんとなく。
ナタル:我々の出番はコレ(回想)だけか?
管理人:…たぶん。
フラガ:…俺、出てないんだが。
管理人:そういえばそうね。でもコレ、ザフトとキラの話だし。

トール:俺のせいでキラが…
キラ:トールのせいじゃないよ。
トール:キラ!
キラ:皆にごめんって言っておいて。話の中じゃ言えないから。
トール:戻って、来ないんだな…
キラ:たぶん…(じっと管理人を見る)

管理人:さ、さぁ次に行きましょう!!

キラ:(あ、逃げた…)



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