選んだ道の先 −≪05≫


 "キラをザフトに…"

 それは隊長からの提案だった。


「―――あれほどの人材を失うのは惜しいことだ。」
 ストライクの捕獲後、艦に戻ってすぐ後のこと。
 彼の部屋に呼ばれてそう告げられた。
「君も親友がこのまま裏切り者と呼ばれ続けるのは嫌だろう?」
 表情の見えない仮面の奥に見えているものが何かはわからない。
 片手に持った報告書にざっと目を通し、彼はそれを机に置いてアスランの方を見る。
 その書類にはキラの写真が貼ってあった。

「君には彼を説得してもらいたい。」
 ザフトに入るように、と。
 え。という表情をしたアスランに、クルーゼは口元だけで笑ってみせた。
「君にしか出来ないことだ。」
 君は彼の親友なのだから。

「し、しかし隊長… 私はっ!」
 ストライク… キラを捕獲するように言われたのは出撃する直前。
 その時は意味が分からなかった。
 ただ自分にも都合が良いことだったから受け入れただけだ。
 それがキラを取り戻せる最後のチャンスだと。
 もちろん何の理由も無く捕獲など言うはずがないと分かってはいた。
 隊長が何も考えずに そんなことを言うはずがないと。

 けれど できればこれだけは避けたかった。
 自分としては、もうキラには戦って欲しくなかった。
 これ以上危険な目には合わせたくない。


「アスラン、忘れてもらっては困るが彼は捕虜なのだよ。」
 困ったようにクルーゼが言った。
「!」
「しかも彼はストライクのパイロット、私も努力はしてみるが… 刑がそう軽くないことはすぐに
 わかると思う。」
「…っ」
 爪が掌にくい込むほど、アスランは拳を強く握り締める。

 ナチュラルに騙されてたとはいえ、何て馬鹿なことをしたんだ キラ。

 事の重大さを、改めて思い知らされた。


「彼を助ける為にも説得してみてはくれないだろうか。」
 気持ちを察してか、いくぶん柔かくした声でクルーゼは言う。
「彼が承諾すれば我がクルーゼ隊、―――ラスティの後任として彼を受け入れよう。」
 それだけの実力がある。
 彼ならば全ての行程をパスして"赤"を着れるだろう。
「…受けてくれるか?」

 キラが承諾すればまた一緒に居られる。
 戦場は危険だとはいえ、キラをこのまま死なせることに比べれば。
 それに、戦場の危険なら 自分が守ってやれば良い。

 それはアスランにとっても甘い誘いだった。


「―――分かりました。ただし1つだけ、条件があります。」

 やっと取り戻したんだ。
 もう 2度と失わない。…離すものか。







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管:捕獲って隊長の案だったんだね。
ア:あぁ、絶好のチャンスだと思った。これで堂々とキラを取り戻せると。
管:でも 何で今頃?
ア:さぁ? 隊長の考えは俺にはよく分からないから。
管:それで良いんだ…?
ア:俺はキラさえ居てくれればあとはどうでも良いから。
管:…そうね。そうだったね、君は。



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