選んだ道の先 −≪02≫
「キラ 大丈夫か!?」
駆け寄ってすぐに 身体中に傷が無いかを確認する。
頬に肩に、触れながらひとつひとつ確かめて。
「!」
そして手袋の甲の部分が破れ血が滲んでいるのを見つけると、即座にそれを脱がせた。
白い肌に一筋の赤が痛々しく浮き上がって見える。
―――キラに怪我をさせないように。
その為にコクピットは狙わないようにと 他の3人にも注意はしておいたのだが。
あの激しい戦闘ではやはり無理があったのだろうか。
「医務室…っ」
細い手首を掴んで アスランは焦った声でキラを促す。
その表情は 自分が怪我をしたわけでもないのに自分の時以上に青褪めている。
けれど、キラはそれを荒く振り解いた。
「違うでしょ。」
「キラ…?」
驚くアスランに対して、キラはまた口元だけの笑みを見せる。
「僕が行くのは医務室じゃないでしょ?」
かつて見せたことも無いほど冷めた瞳でアスランを見つめた。
それに一種 寒気を覚えたが、今はそれより大事なことがある。
「何を言ってるんだ。傷が残ったら大変だろう。」
「その傷を付けたのはそっちじゃないか。」
アスランに向かって、感情無く 冷たく言い放つ。
それにアスランは言葉を失くした。
「僕は裏切り者だよ。僕は君の敵、違うの?」
「それは…っ」
「だから戦ったんじゃないの? 敵だから戦ったんでしょ?」
…だから。優しくしないで。
耐えられないから、甘えたくなるから…っ
冷たい言葉の奥で 本当の心が泣きながら叫ぶ。
「っ キラ!」
「こんな傷、たいしたこと無い。残ったってかまわないよ。」
傷を軽く舐めるとアスランには背を向けた。
そして呆けている兵の1人に近づく。
「捕まえて下さい。」
「えっ」
差し出された両手にその兵はどうしたらいいか分からずに慌てふためく。
「キラ! 止めろ!!」
けれどアスランの言葉は聞かない。
「僕は敵です。銃も下ろして何をやってるんですか。」
早く…!
冷静な声に僅かな震えが混じる。
それをかき消すように奥歯をかみ締めて表情を隠した。
「なんならこの場で殺してもらってもかまいませんよ。」
「止めるんだ キラ!」
アスランの声もだんだん遠くなっていくような感覚がする。
でも まだ倒れるわけにはいかないんだ…っ
遠のいてきた意識を必死で繋ぎとめる。
ずっと張っていた緊張も、気力で隠してきた身体の痛みも限界がきていた。
目の前の景色がだんだんと霞んでくる。
暗闇に呑まれていく視界は上下の感覚すらも失わせた。
「早く 僕を―――…」
早く―――…
ぐらりと、キラの身体が傾く。
「キラ!?」
駆け寄ったアスランが 崩れる身体を寸前で抱きとめた。
「キラ! どうしたんだ!?」
「う…っ……」
苦痛に歪んだ表情、額にはうっすら汗が滲んでいる。
唇は青く 引き寄せた身体は小刻みに震えていた。
「! 熱が…!」
しかもこれは生半可なものじゃない。
さっと上着を脱ぐとキラを包み 抱き上げる。
「邪魔だ! どけ!!」
アスランの声が静まり返った場に響いた。
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管:"抱き上げる"ってさぁ、やぱお姫様抱っこなわけ?
ア:当然だ。
キ:アスラン…ッ!?(赤面)
管:…恥ずかしくない?
ア:何故? それ以外に何か考えられるのか?
キ:僕は恥ずかしい…(小声)
管:おんぶとかじゃダメだったの?
ア:それじゃ キラの顔が見れないじゃないか。(即答)
管:…あ、そ。
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