双子の相違点


 2人で手を合わせてみる。
「やっぱりキラの方が大きい。」
「そりゃ僕は男の子だし。」
 双子といえども男女差というものはあるから。
 キラは少年らしく骨ばった指をしているし、カガリは少し丸めな感じだ。
「身長は3cmしか変わらないのに。」
「でも別に手が大きいからって良いことないよ。」
「まぁそう言われたらそうなんだけど。でもなんか悔しい。」
 一関節分違う、それがカガリは気に食わないらしい。

「…カガリの指、細くてキレイだね。銃ぶっ放したりしてる割には。」
 重ねた手は自分より白くて細くて、爪もすらりとして艶がある。
「後半は余計だ。―――キラこそ男の割には細いよな。」
「それも余計なお世話。気にしてるんだから。」


「でも こうやって見ると違いって意外と分かるもんだな。」
「そうだね。カガリの方が髪柔かいし。」
 そう言って、重ねていた手を離して一房を玩ぶ。
「肌はキラのがちょっと硬い。」
 頬をつんと突付く。

「鏡を見てると同じ顔だなーって思うのに。」
「私も。」
 コツンと額を合わせて、2人はクスクス笑い合う。

 目の前に在るのは自分と同じ顔。
 それはちょっとだけ不思議な気分。
 意識しない時はそうでもなかったのに。
 見れば見るほど双子だと実感する。
 でもさらにじっと比べると違いも見えてきて。
 端から見ればどこが違うんだと言われようとも、自分達にとっては大きな違いだ。



「そういえば…」
 ふとカガリが空を仰いで考え込む。
「何?」
 それにキラが少し油断した。
 機を逃がさずカガリはさっと身を屈めると キラの腰に抱きつく。
「!? カガリ!?」

「―――腰、細いよな。」
 羨ましいと言わんばかりにキラの顔を見上げる。
「筋肉付きにくい体質なんだ…って いつまでそうしてるつもり?」
「良いよなー」
 キラの抗議をカガリは聞く耳持たず。
 巻きついたままだけれど、キラもそれを強く払おうとは思わない。
 どこか慣れがきた自分がいた。

「離してってば。…カガリだって十分細いだろ?」
「でもお前には敵わない。」
「ってかそれ骨盤の違いだから 比べるのはおかしいと思うけど。」
 2人が違うと思うのは主に男女の違い。
 同じなのに違う、それも少しおかしな感覚。




「…何やってんだ?」
「キラ? カガリさん…?」
 訝しげな表情でこちらを見ている2人にキラとカガリは同時に顔を上げる。
「「アスラン。ラクス。」」
 見事にハモった声が ピタリと止まった動作の後に返ってきた。

 確かに周りが見たら何事だろうと言いたくなるのも分かる。
 カガリがキラの腰に巻きついて、
 さらに抱きついた時の勢いで 2人共にふわふわと宙に浮いたままなのだから。


「2人の違う所 探してたんだ。」
 やっと離れた2人は 壁を使ってすとんと地に足を付ける。
「…どう見ても暴れているようにしか見えないんだが。」
 というか 同じ毛色のネコがじゃれているというか。

「だってキラの奴、私より腰が細い。」
「だから骨の作りからして違うんだってば。」
 キラの反論に、カガリはくるりと向き直って憮然とする。
「双子なのにズルイじゃないか。」
「カガリは今のままでも十分だって。」
「男の方が細いのは 何か納得いかない。」
「無茶言わないでよ。」



「…妬けてしまいますわね。」
 ぼそりと、正直な言葉をラクスが呟く。
 完全に存在を外に放り出されてしまった。
「血の絆には敵わないということでしょうか。」
「でもあまり仲がよろしいと誤解してしまいそうですわ。」
「…そうですね。」
 思わず苦笑いが漏れる。
 ちょうど同じことを、自分も少し前に感じたところだったから。


 ―――仲が良すぎるのも考えものだ。







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懲りずに細腰ネタ。
仲が良過ぎる双子が好みデス。



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