act.4 - 担任


 A組担任ラウ・ル・クルーゼ教諭とB組担任ムウ・ラ・フラガ教諭が職員室前でばったり会っ
 た。
 これがもしアスランとキラなら、アスランの方には花が飛び 時には抱擁まで行き着いたりす
 るのだが。
 この2人の場合、間に散るのは鋭い火花だ。

「―――今年も楽しみだな。」
「そっちには負けないぜ。」

 たったそれだけの言葉で意志疎通が図れている辺り息はぴったりなのだが、それを言えば互い
 が冗談じゃないと対立を深めてしまうだけなので誰も言わない。
 ちなみに 2人の話題は今度行われる体育祭について。
 何かと対立する彼らにとって 体育祭などのイベントは勝負するには最高の行事だろう。
 特に体育祭は毎年クラス対抗だ。
 そろそろそれに向けての練習も始まり、そのため担任の意気込みも増していた。

「うちのクラスはエリート揃いだ。一般のクラスとは格が違う。」
 勝ち誇ったようにクルーゼが言えば、フラガはそれが何だと笑い飛ばす。
「A組は団体戦に向かない個人主義ばっかだろ。それに比べてうちは団結力なら負けん。」

「「……っ」」
 両者譲らず、睨み合いは長期戦になるかと思われた。
 しかし、横からかけられた声に2人は驚かされることになる。


「今年の体育祭はクラスではなく学年対抗ですよ。」

 いつから聞いていたのか―――おそらく最初からなのだろうが、そこに立っていたニコルの言
 葉に2人の思考が一瞬止まった。
 その後同時に向けられた視線を受けて、彼はにこりと笑うと後ろを振り返る。
「会長(アスラン)が変えたんです。」
 ね? とニコルが言ったその先にいたのは当の生徒会長。
 2人の視線もバッとそちらへ向けられた。
「「どういうコトだ!?」」
 聞いてないぞと彼らは仲良くハモって叫ぶ。
「そんなの決まってるじゃないですか。」
 けれどたとえ教師2人に詰め寄られても彼は特に動じもせず。
 頭脳明晰で優秀な生徒会長様は、さも当然とばかりに次のような理由を述べた。

「何故俺がキラと戦わねばならないんです。」

「「は!?」」
「PTAにも理事長にも許可は得ていますし、職員会議でも承認されたはずですが。お二人は
 聞いておられなかったんですか?」
 ものすごく個人的な動機だが、その根回しは完璧で流石は歴代トップ誇る生徒会の長といえる。
 その頭をもっと他のことに使えよとの意見もあるが、彼の能力がフルに発揮されるのはキラに
 関してのみである。

「おい、お前さん書記だろう。こんな理由でうちの伝統壊されても良いのか!?」
「僕としてもキラと戦うのは嫌だったのでむしろ歓迎します。」
「………」
 お前もか。
 彼がこれなら他のメンバーも同じようなものだろう。"キラ"の影響力は学園の伝統さえも変え
 てしまえる程らしい。


 この日教師2人は、この学園の本当の実力者を知った。

 それを知らないのは 本人ただ一人である。







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このネタを考えた頃キラとアスランは思いっきり敵対していまして。
パラレルくらいは夢を見たかったんだと思います。



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