act.3 - 友達


 隣のクラスとはいえ、キラとアスランが休み時間に話すことはあまりない。
 アスランは大抵生徒会の仕事に追われているし、それを知っているキラがクラスを訪れること
 もなくて。

 そんな2人が廊下で会ったのは本当に偶然で。
 アスランとしては、こんなチャンスは滅多にないのだから 後でどんなにイザークにどやされ
 ようともキラを優先して話したいと思っていたのだが。
 ―――けれど 別れはすぐにやってきてしまう。

「キラ! 次、移動教室!!」
 向こうでキラと同じクラスの友達が呼んでいる。
 それに手を振ることで答えたキラは アスランの方に向き直ると行かなきゃ、と告げた。
「じゃあね。アスラン。」
 軽く言って キラは級友達の所に走って行く。
 その、あまりにあっさりとした別れに アスランは思いっきり凹んだ。


「あぁ… キラぁ……」
 情けない声で呟く名前は彼には届かない。
 行き場のない手は力無く下がり、肩を落としてがっくりとうな垂れた。
「…なんだか楽しそうですよねぇ。」
「ぅ…」
 後ろからひょっこり現れたニコルの追い打ちの言葉にさらに落ち込む。
 囲まれて、わいわいと騒ぎながら去って行く後ろ姿。
 去年まではいつもその隣にいたのは自分だったはずなのに。
 その距離はあまりに遠くて、とても寂しい。

「―――さて。アスラン、貴方は仕事です。」
 少しくらいこの気持ちを気遣って欲しいのに、ニコルはアスランの襟を掴むと ズルズル引き
 ずって行く。
「キラー…っ」
「黙って下さい。」
 アスランの悲痛な叫びは虚しく響き、キラは角に消えていった。






「良かったのか?」
 遠く聞こえるキラーという声に、サイが心配そうに聞いてくる。
 どうして と視線で問うと、彼は苦笑いしてキラの顔を指さした。
「思いっきり寂しいって顔してる。」
 ミリアリアもトールも、そしてカズイも、サイと似たような表情でキラを見ている。
 また心配をかけてしまったのだと、ひどく申し訳ない気分になった。

 アスランと離れて、カガリも忙しくなって。
 彼らはそんな時に初めてできた自分の友達だ。

「…でも、僕ももっとアスラン離れしなきゃいけないし。」

 キラの心を理解して、協力してくれる優しい人達。
 彼らはアスランと距離を置こうとしたキラを快く受け入れてくれた。

「―――偉い偉い。」
 ポンポンとミリアリアが優しく頭を撫でる。
 微妙に子ども扱いされている気もするけれど、それはそれだけキラの表情が浮かないからなの
 だろう。
 そしてそんな優しさが今のキラには必要で。

「ありがとう。」


 アスラン離れできるまでにはまだ遠そうだ、と。
 優しさに甘えながら反省した。







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キラも寂しがってます。でも実は意図的という話。



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