act.2 - 放課後


「キラ! 今日は一緒に帰ろう。」

 アスランが放課後フリーになるのは本当に久しぶりだ。
 やはりここはとキラを誘ったのだが、答えが返ってくる前に 2人の間に細い腕が割り込んで
 きた。

「ダメだ。」
 顔は同じでありながら キラより鋭い琥珀の瞳がアスランを真っ直ぐに睨みつける。
 決して忘れていたわけではないが油断した。アスランがフリーなら同じ役員である彼女も当然
 フリーなのだ。
 手強い敵の登場に内心舌打ちながら、表面上は視線だけで彼女を威嚇し返した。

「…俺はキラに聞いたんだが。」
「キラは私と帰るんだ。お前なんかお呼びじゃない。」
 キラを守るようにぎゅっと彼に抱きついて 彼女はアスランにあっち行けと片手で追い払う仕
 草をする。
 けれどもちろんそれで引くようなアスランではない。
 彼女とはもう10年以上、キラを巡って争っているのだから。
「カガリは帰っても一緒だろ。帰りくらい俺に譲っても良いじゃないか。」
「良くないっ キラを狙ってる奴に渡せるか!」
「心外だな。俺は誰よりキラを大切にしているのに。」
 わざとらしく溜め息をつけば、それは彼女の怒りを煽る。
「しらばっくれるな!」

「じゃあさ、みんなで帰ろうよ。―――ね、ラクス。」
 いつの間にやら隣にいた少女に、しかし全く驚いた様子もなく振り向いたキラが尋ねる。
 それに彼女は笑顔で応えた。
「はい、私もご一緒させて頂きますわ♪」

「「!」」

 キラの意志は全ての意思。その一言で 今日は4人で帰ることに決定。








「…で。俺達がいて、どうしてこういう所を選ぶのか。」
 カフェか買い物かで今日は買い物を選んだものの、ラクスとカガリが入っていった店の前で 
 アスランは一緒に入るわけにもいかず溜め息をついた。

 2人が入ったのは 若者向けの店ばかりが入ったデパートのランジェリーショップ。
 滅多に行けない買い物だから気持ちは分かる。
 が。だからと言ってわざわざ自分達と一緒に帰る時に行かなくても良いと思うのだが。

「遅くても呼びに入れないじゃないか…」
 向かいの柱に寄りかかって、2人を遠目に見ながらアスランはボソリと呟く。
 店の前に立つだけでも抵抗を感じて これ以上は近づく気にもなれない。
 長くなるようならキラを連れて逃げてやろうかとさえ思った。
「え? 僕入れるよ?」
 それにきょとんとして返したのは隣のキラ。
「キ、キラ?」
 驚くアスランを余所に、待っててねと言うと そのままスタスタと中に入っていった。



「あ、キラ。どっちが良いと思う?」
 キラが横に並ぶとカガリもさも当然のことのように尋ねる。
「カガリには右のオレンジの方が似合うと思うよ。」
 対するキラも服を選ぶ気安さで答え、周りもキラがいることに疑問を持たないようだ。
 でもアスランは知っている。
 それはキラだからで、もし自分が行けば絶対奇異な目で見られる。下手すれば変態扱いだ。

「…それにしてもキラ、違和感がなさ過ぎだ。」
 本人が聞いたら褒めてないと怒られそうだが アスランにすれば素直に褒めたつもりだ。
 ―――たとえ着ても違和感はないのだろうか、と。
 たまたま目に入った淡い桃色の下着が想像と重なって、思わず真っ赤になって俯いた。



「…変態がいるぞ。」
「いつものことですわ。」
「? 誰のこと?」







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…パ○コのランジェリーショップに行った時、ここにキラが混じっても違和感ない気がするなぁとか 
そんな馬鹿な考えに至って……



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