act.1 - 昼休み


 昼休みの生徒会室。
 そこは生徒会役員達の溜まり場であり、興味本位で騒がれることもない、居心地の良い空間
 ―――

 のはず、なのだが。


「ね、アスラン。次はどれが良い?」
「そうだな… じゃあミートボールを取ってくれないか。」

 中央に配された応接セットのソファで、新婚カップル並の甘ったるさを醸し出す2人に周りは
 かなりうんざり気味だ。
 それでも教室よりはいくらかマシ、ついでに仕事も片付けられるからと ここにいる。
 しかしそんな周りの心情など意に介さず、当の2人は自分達だけの世界を繰り広げていて。

「はい。」
 さも当たり前のようにキラはフォークに刺したミートボールを差し出し、アスランがそれをぱ
 くりと口に頬張る。
 美味しい?と首を傾げて問えば、アスランはにこりと笑んで頷いた。

「もう1ついる?」
「いや、今度は俺がキラに食べさせてあげるから。」
 そう言ってキラが持っていたフォークを取り、同じように刺してキラの口に運んでやる。
 美味しさに頬を緩ませて、キラも至極満足そうだった。
「やっぱり母さんのお弁当が1番だね。」
「残りの1つもキラが食べると良い。」


「……いい加減にしろ 貴様等っ」
 遂に痺れを切らしたイザークが 机をダンと叩いて立ち上がる。
 自称親友同士の甘々なバカップルぶりを見るのはこれ以上我慢ならなかった。
「クラスも違う。加えて生徒会まで忙しくてなかなか一緒にも帰れないんだ。これくらい良い
 じゃないか。」
 しかし イザークの抗議にアスランは涼しい顔。
 キラに食べさせてやりながらさらりと返す。
「毎日繰り返しておいて何を抜かすかァ!!」
「煩い イザーク。」
「…っ!」
 ブッツン、と 何かが切れる音がした。

「今日こそ泣かす!」
「やれるものならな。」

 途端始まる口論を止める者はここにいない。
 実を言えばこれも日常茶飯事なのだ。
 ここにカガリがいれば三つ巴の大喧嘩が始まるのだが、幸い彼女は昼食をここでは取らない。


「毎日、毎日… よく飽きないもんだな…」
 向かいのニコルと同じく呆れてそれを眺めていたディアッカのところにキラがトコトコとやっ
 て来て。
 疑問に思っていると彼は軽くディアッカの制服の裾を引いた。
 ちなみに口論中の2人はキラが傍からいなくなったことには気づいていない。
「ディアッカ。自販機まで付いて来て。」
「? 喉でも渇いたのか?」
「僕じゃなくて。」
 言いながら、キラはちらりとアスランとイザークの方を見やる。
「…あぁ、そういうこと。」
 勝手に始めたんだからそこまで気遣ってやる必要はないとディアッカは思うのだが。そこがキ
 ラの優しさだ。
 了解と彼は笑って席を立った。
「俺もついでに何か買うか。ニコルは何が良い?」
「ミルクティーをお願いします。」
「OK」



 キラがいなくなったことに2人が気づくのは、パタンとドアが閉まった後のこと。







---------------------------------------------------------------------


親友なのですよ、2人は。アスランはともかくキラは本気でそう思ってます。



BACK