Happy Day




 --6--

「そろそろ抜け出す?」
 知った人に一通り挨拶は済ませた。
 パーティーも終わりに近づきそろそろ主役の存在も薄れてきた頃だ。
 悪戯ぽくキラが笑うと ラクスもすぐに賛同の意を示した。
「ええ!」

 そして 2人の姿はいつの間にかそこから消えていた。
 何人かはそれに気づいたけれど。
 黙って気づかないフリをしていた。









 2月もまだ初め、外は凍えるほど寒くて。
 白い息が月明かりに照らされる。
 寒いからとキラが着せようとしたコートをラクスは断って、トンと凍った噴水の縁に立った。
「危ないよ、ラクス。」
「大丈夫ですわ。それに、キラが受け止めてくれると知っていますから。」
 月光を浴び佇んで 彼女は微笑む。
 その美しさがまるで人ではないように見えて。
 とても 神聖なものに感じた。

「―――女神様みたいだ。」

 触れるのも躊躇われるような、そんな美しさ。
 青白い輝きに その姿は光を纏っているように見える。
「僕だけのものにするには勿体ないね。」
 自嘲も含めてそう言った。

 だって 彼女は本当に白くてキレイだから。
 それは内面の強さからによるものも強いのだろう。
 見れば見るほど自分には身に余る女性だと思う。

「私は、私の意志でキラを選んだのですわ。」

 ラクスの言葉は真実。
 告げる言葉はいつも彼女の正直な気持ち。
 分かってる。気づいてる。
 でも。

「いつか月に帰っちゃうのかな…」
 ずっと前にアスランと読んだ古い書物の物語を思い出してしまう。
 美しいその人は、満月の晩に月に帰ってしまうんだ。
 1度も振り向かず、思い出も全てを忘れて。
「月に帰るのはキラではないのですか?」
「そうじゃなくて… ううん、気にしないで。」
「キラ…?」

 君が離れていくのが怖いんだ。

 僕は君を幸せにできない。
 君の想いにまだ応えられない。

 そんな僕の傍に、君はいつまでいてくれる?



「キラ」
 不意にラクスが両手を伸ばしてくる。
 それに応えてキラもまた腕を彼女へと伸ばして、その手を取るつもりだった。

 けれど

 ふわりと光が舞った。

「え?」
 その手をすり抜けて、彼女の腕はキラの首へと回る。
「えぇ!?」
 急に後ろへとかかった力に 倒れそうになる身体を何とか留めて。
 腕の中に入ってきた彼女を、驚いたように見下ろした。

「ラ、ラクス??」
「やっぱり受け止めてくださいましたわ。」
 嬉しそうに、彼女は微笑んで見上げてくる。
「私は何も要りません。ただ、こうして受け止めてくれる貴方がいれば良いのですわ。」
 彼女は優しい。
 いつでも、僕の心を優しく包んでくれる。
「傍にいて下さるだけで充分なのです。」
 笑顔はいつも僕を癒してくれる。

 本当に、どうして僕を選んだの。
 もっと楽に 幸せになれる方法だってあったはずなのに。

「……っ」

 すっかり冷えてしまった彼女の身体を 熱を分けるように強く抱きしめた。
 言葉に出せない感謝を、腕の力に込めて。

「―――ありがとう…」
「…"おめでとう"、ではないのですか?」
「うん… 傍にいてくれてありがとう。」

 コートの中に包み込んだ彼女は 安心しきったようにその身を預けている。
 聞こえてくる互いの心音。
 伝わるぬくもりは、彼女がそこにいるから。


「ありがとう、ラクス…」

 君が今ここに、生きてくれていることに感謝します。




無理矢理END。


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最後はやはりキララクでvv

―――って 何故シリアスなの。
ずっとギャグっぽくしてきて何故キララクだけ。
かぐや姫を思い出してしまった私のせいですか。そうですか(自己完結かい)
キラ、話中でプレゼントあげてませんが、実はあのドレスとコートがプレゼントだったりします。
白いふわふわのコートですよv
1番に 誰よりも早くプレゼント済みなのです☆
ちなみにキラが着ていたのは濃紺のコートです(誰も聞いてない)
さらに ラクスがコートを断ったのは、キラに抱きしめてもらうため。
身体が冷たいとキラは温めようとしてくれるでしょうから。
そんな子です、ウチのラクスさんは(笑)
なんかまとまりない話だけど気にしないで下さい(マテ)

…何だかアスキラでやりそうなシチュエーションだなぁ……(え)
キラは自分から抱きしめることなんてできるのでしょうか。最強の受け身さんが。



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