Dear...☆"Lost child"(日記連載中)を読まないとなんだか分からない設定かもしれません…
それは2人きりで過ごせる唯一の時間。 今回はプラントのマンションで 2人は休日を過ごしていた。 リビングのソファにアスランはキラを抱っこする形で後ろから腰に手を回して座っている。 普段離れている分スキンシップが過剰なのは毎度のことなので キラも諦めて受け入れていた。 ―――彼の腕の中にすっぽりと収まってしまう自分に、少々複雑な気持ちを持ちながら。 「来月の君の誕生日さ、何か欲しいモノ ある?」 髪や項にキスを落とされながら、けれど視線はテレビに向けたままで、唐突にキラが聞いてきた。 「キラv」 「…………」 ほぼ即答に近いその回答に、またか という顔と共に盛大な溜め息をつかれる。 「…じゃあ勝手に何か送るよ。」 すでに疲れた雰囲気の声、本気なのにまた冗談にされてしまった。 そして、その言葉の内容を反芻して「あれ?」とアスランは首を傾げる。 「? 送る?」 「うん。君の誕生日前後1週間はオーブから出れないから。だからせめて君が欲しいモノを贈りた かったんだけど。」 「…そうか。」 一緒に過ごせると思っていただけに、落胆しているのが自分でも分かって。 キラの肩口に顔を埋める。 思った以上に出てきた声は小さかった。 「ごめん。こっちもいろいろ慌しくて。」 それに気づいたキラは本当にすまなそうな表情で俺を見る。 気を使わせてしまったことに後悔して、顔を上げるとできるだけの笑顔を向けた。 「仕方ないさ。そういう立場なんだ。」 「―――ごめん。」 失敗したのか、キラの表情はそれでも晴れない。 キラに誕生日を祝ってもらいたい、それは確かにある。 でも今は 笑顔の方が良い。 「キラ…」 キラの身体をさらに引き寄せて 後ろから耳元で呼ぶ。 途端キラの顔が火がついたように赤くなるのを確認して。 嬉しくてくすりと笑みを漏らす。 「じゃあ今夜、キラを頂戴?」 キラだけに向ける甘い声、彼の身体がビクリと震える。 「…今夜じゃなくても貰うくせに。」 そう言いつつもキラのそれは拒絶ではなく。 だから微笑んでキラを抱き上げて 自分達の部屋に向かった。 君は冗談のように取るけれど。 キラ以外欲しいモノなんてないんだ。 ずっと欲しかったのはキラ1人。 他は何も要らない。 キラさえここに居てくれれば良い。 俺のそばで笑っていてくれれば、それで幸せなんだ。 だから今は、他に望むものなんてない。 ******* 自分の為に開かれた盛大な祝賀会。 本来なら喜ばなくてはならないのだろう。 でも それも俺にとっては無意味なもので、キラと2人で過ごした方が何倍も楽しい。 …準備してくれた人達には悪いけれど。 キラが居なければなんてつまらないものなんだろう。 キラが居ないだけで息が詰まる。 帰りたい。 でも帰っても、あのマンションにキラは居ない。 プレゼントは届いていても、そこにキラの姿はない。 だから バルコニーで1人夜風に当たっていた。 人工の宙、色もこの風の冷たさも同じなのに、そこに光は無い。 オーブのマンションのベランダで 2人見上げた宙。 郊外だからこそ見える満天の星空に魅入った彼の横顔。 それに見惚れていた。 結べば神話に繋がる輝く星達。覚えているのはいくつくらいあっただろうか。 そういうことをよく知るキラの話に耳を傾けながら、でも聞き入っていたのはキラの声。 ―――帰りたい。 どこに、じゃない。 キラのそばに… キラの隣に帰りたい。 「―――Happy Birthday アスラン。」 不意に後ろから回された細い腕。 背中に伝わる体温。 驚きでびくりとした自分の身体、それに対して微かに笑う声。 「どう、して…?」 信じられなかった。 ここには来れない、そう言ったのは彼本人なのに。 夢かと思った。 だから、彼の顔を振り向いて 見ることができない。 それを意図したのか、彼はさらに回した腕に力を込めて自分の体温を伝えてきた。 恐る恐る彼の手に自分の手を重ねれば ちゃんと触れる柔かい肌のぬくもり。 やっと安堵して、肩の力を抜いた。 「今夜だけ、時間貰ったんだ。だから朝には帰らなきゃならないんだけど。」 「え?」 「会いたかったんだ。これだけはどうしても直接言いたかったから。」 聞きたかった、彼の声。 言われた言葉は、信じられないほど嬉しいもの。 今日じゃなきゃいけない。 通信越しじゃ全ては伝わらないから。 これだけは、隔てるものが無い場所で、君の瞳を見て言いたかった。 笑ってキラはそう告げた。 ホールから漏れた明かりがキラの笑顔を照らす。 身を離したキラと向き合って、真っ直ぐに見つめ合った。 なんて綺麗なんだろう。 どうして、こんなに愛しいんだろう。 「好きだよ アスラン。生まれてきてくれてありがとう。」 他の誰に言われるより、こんなにも心が満たされる。 どんなに大勢の人に祝われても、キラの一言には勝てない。 「キラ…」 衝動的に抱き寄せればキラも手を回してくる。 心のままにありがとうと呟いて、唇を彼のそれと重ねた。 抵抗せずに瞳を閉じるキラにさらに深いキスを贈る。 誰かに見られるなんて考えない。 この行動こそがキラに対する正直な気持ちなのだから。 この喜びを1番強く示せることだったから。 「…アスラン。これからどうする?」 長い長いキスの後、頬を紅潮させ艶やかな唇を笑みに変えて。 キラは悪戯っぽい笑みを浮かべ 自分を見上げて言った。 「僕、今日非公式訪問なんだよね。だから挨拶する必要も無い。」 キラはきっと分かってる。 俺が欲しいモノ、望むモノ。 「―――帰ろうか。朝までは居られるんだろう?」 それが示す意味は明白。 今日は誕生日、俺が欲しいのはキラだけ。 「…良いよ。」 少しだけ間があって、キラはこくんと頷いた。 耳まで真っ赤にして言うから、それがまた愛しくて熱い耳朶に唇を寄せる。 「って まだ早いよ…っ」 「じゃあ早く帰ろう。俺はもう待てない。」 朝起きた時、隣にはもうキラの姿はなかったけれど。 ベッドサイドのテーブルの上には1枚のメモと ラッピングされた小さな袋。 "Happy Birthday――― 心はいつもそばに。 プレゼントは肌身離さず持っていて。 From キラ" 終われ。 --------------------------------------------------------------------- さて。キラは何を贈ったのでしょう? つーかー 2回やってんですけど〜 それってどうなんですかー? アスキラは完全に2人の世界ね。 他の人達が入り込む隙間もないってか。 プレゼントはキラvっていうのももちろん考えてましたけどね。 それだとフリーにできないですからね。 でもあまり変わらない気がするのはどうしてでしょう?(苦笑)