お伽話の世界へ




そして約束の1週間が押し迫り。
あと1日だというところで王子はフラガ侯爵家へもやって来た。


相手が王子故に使用人が会話するわけにはいかないので、対応は娘2人が行なう。
もてなしの応接室へ案内する廊下で、アスランは我慢しきれず、行く先々で言った幾度目かの
質問を2人に向けた。
「ここに茶の髪で紫の瞳を持った少女はいますか?」
開口一番に聞かれたことに、ラクスとカガリは顔を見合わせて微笑った。
振り向いた2人は姉妹らしく やはり何処となく似ている。
「茶の髪と紫の瞳の子なら確かに居ますけど…」
「えっ?」
けれど嬉しそうに瞳を輝かせたところでカガリが、
「でも、キラは"少女"じゃないよ。」
それを継いでラクスも、
「れっきとした男の子ですわ。とても可愛らしいですけれど。」
楽しそうに姉妹は笑っている。
「…はぁ……」
からかわれているんだろうか…



【トリィ】
何かに反応したのか、トリィが突然アスランの肩を離れて飛び去ってしまった。
「あっ こら!」
けれど彼の制止の声もトリィには届かない。
器用に旋回しながら奥へと入って行ってしまった。
「探しに行かれた方がよろしいんじゃありません?」
ラクスの問いにアスランは少し戸惑う。
自分は王子とはいえここは侯爵家、他人の家だ。
「お好きにまわって構いませんから。」
彼の気持ちを察したのか、彼女は優しく微笑む。
「どうも、すみません。」
一言謝って、彼は独り トリィが消えた方向へ走って行った。











今庭に咲いているのはホワイトローズ。
ラクス姉さんの1番好きな花だ。
キラは季節毎に色が変わるこの庭が好きで、今日ものんびりと散歩をしていた。
ふと、自分の頭上を影が通り過ぎる。
「…?」
【トリィ】
機械的な羽音をさせて、トリィはキラの上空を旋回する。
それに驚きはしたものの、キラが手を差し出すと 自然とそこへ降りてきた。
「え? あれ、どうしてお前がこんな所に?」
あの時王子の肩に乗っていた鳥。
ついでにキスシーンまで思い出してしまってキラは耳まで真っ赤になった。



「トリィ! 何処に居る!?」
「!」
聞き覚えのある声におそるおそるキラが振り向くと、ばっちりと目が合った。
そこだけ時が止まったように立ち尽くす2人。
絡み合う視線にキラは唾を飲み込んだ。
落ち着け。相手は自分があの時の姫とは知らないのだから。
「…貴方の、ですか?」
極力声を抑えてトリィが乗った手を差し出す。
「あ、ああ。」
その声で現実に引き戻されて、まだ半ば呆然としながら受け取った。
似ているけれど違う。艶やかな濃茶の髪も大きな紫の瞳も同じだけれど。
けれどあの時の彼女は確かに女性だった。
でも今目の前に居るのは確かに少年だ。
彼が 彼女たちが言っていた"キラ"という人物なのだろう。

「では 僕はこれで…」
そう言って去ろうとする腕を思わず掴む。
無意識だった。
「え、あの、ちょっと…!?」
困惑したように慌てる彼を引き寄せる。
違うけれど同じだった。
腕の中に収まる小さな身体も、その温もり、匂い、全てが彼女と同じだった。
頬に手をかけ、吸い込まれるように唇を近づける。
「〜〜〜ちょっと待ってくださいっ」
ドンと相手を突き放して距離を置く。
思わず流されそうになってしまった。あと数cm。
「僕は男ですよ!? い、今何をしようと…!?」
紅潮しているのか青褪めているのか分からない顔でキラは彼を見る。
紫の瞳は潤んで、やっぱり彼女を思い出させた。
「あ、いや…」
またも無意識にキスをしようとしてしまった。
しかも今回相手は男だ。
同じだからといってそれはいくらなんでもマズイだろう。
けれどダメなのだ。
全ての仕種が 彼女と同じで愛しく感じられる。
泣けばその涙を掬ってあげたいし、笑ってくれるなら何でもしよう。
もうどっちでも良い気がしてきた。

グイッ

「ぅわっ!?」
強引に腕を掴んで引き寄せて そのままの勢いで彼に口付ける。
「……っ!」
逃げようとしても細い腰に回された腕はきつく。
絡み合っていた指が離れ、その手は髪に絡まりながら頭を支えて キスは深くなる。
最初は驚きに見開かれていた瞳も、次第に閉じられていった。




「…?」
幾度となく深いキスを繰り返しているうちに、相手の胸元に違和感があることに気づいた。
密着しているはずの2人の間に柔らかいものがあるのだ。
朦朧としているキラを支えつつ、少し身体を離してみる。
そして、アスランは固まった。
白いシャツを破りそうな勢いで張り出したそれは間違いなく…
「……女?」
「え…?」
彼の視線を追ってみて、キラもまた愕然としてしまった。
1週間以内にもう1度のキス…!
見事に達成してしまったのだ。




「おめでとうございまーす!」
2人を覗き込むようにして、フワフワ浮きながらニコルが言った。
いつの間に現れたんだと アスランはぎょっとなるが、慣れたキラはもう気にしない。
「ニコル?」
「これで完全な女の子ですね!」
「って やっぱり本当だったの!?」
「当たり前じゃないですかv なんたって僕の魔法ですからv」
確かにただじゃすまないあたりは彼らしい。
「王子様は好きな人と結ばれて、キラさんは玉の輿でお妃様。ハッピーエンドですね♪」
「うわ〜 やっぱり〜〜!」
離してくれないアスランの腕の中でキラは頭を抱える。

「…すまない、話が見えないんだが。」
ニコルに問うと 彼は天使の笑みでもってアスランを見る。
「愛しの姫君はキスで貴方のものになったんですよ。」
は?
全く意味がわからずキラを覗き込めば、真っ赤になってそっぽを向いている。
「1度キスされて、1週間以内にもう1度同じ人にキスされたら 女の子になってしまう魔法を
かけられたんですよ 僕は。」
まさか本当になっちゃうとは思わなかったけど。
「良いじゃないですか。キス、嫌じゃなかったんでしょう?」
「うっ……」
ニコルの言葉には反論できない。
「…ホント?」
にわか嬉しそうに問いかけるアスランに、キラはさらに真っ赤になりながらもこくんと頷いた。
その可愛らしさにまたアスランは眩暈を覚える。
どうしてこんなに可愛いんだろう…

「じゃあお城に帰ろうか♪」
キラをひょいっと抱き上げて、アスランは上機嫌で歩き出す。
さすがに慌てた。
「え、待って! 僕まだ何も…!」
「あぁ そうか。まず侯爵達に報告しないとね。そして許可を貰わなきゃ。」
「あ、え、そうじゃなくて…」
僕 まだ結婚の承諾してないんだけど!?
いや、別に嫌じゃないけどっ 確かにっ!
でも そんな急に、強引な!
しかし笑顔の彼は全く気づく様子もなく。



このままだと承諾得てすぐ結婚式とかなっちゃうんだろうか。
女性のたしなみとか、あの高いヒールでダンスとか、やんなきゃいけないのかな…

どうしよう…


早くも女の子になってしまったことに疑問と後悔を抱き始めている。
けれどそれは今さらどうにもならないし。

彼…いや今は彼女となってしまったキラは、行く先に多大なる不安を感じずにはいられなかった。





おわってしまえー




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※あとがきも壊れてます。

書いてて笑いが止まらなかった! 勢いで書いたとはいえアホっぽいよ 自分!!
でも書いてて楽しかった!(死)
ニコルの黒っぷりとか キラを女の子で描写してる自分に気づいた時とか。
アスランの歯の浮くようなセリフとか! …自然に出てくる辺り 危険だこの人。
控え室… 密室だよ! ヤバイよ!! とか思ってたらキスするし 王子!(笑)
しかも押し倒しですか!? 今日初めて会った女性にそんな!!(笑)
…えー、最近見てる小説が18禁サイトだったりするので基準が分かりません(汗)
これはヤバイですか? 舌はダメですか?(そんなはっきり言うな)
本館の方でも普通に書いてたりするのでどうなんだか分かりませ〜ん(^_^;)
…連載が暗いので反動で思いっきり弾けたって感じですね。
アスランが途中から壊れてます。最初はとてもまともだったのに。
真面目な人は一度箍が外れると恐ろしいという例(笑)
さり気にツッコミを入れるイザ様が私的にお気に入り♪
ただ1人まともで孤高な人v 相手がキラでなければ彼は独り身が似合うと思う。うん。
名前出しそびれましたが、第1王子はディアッカです。
恋人(=トール)のいる踊り子(=ミリィ)を追いかけて、振られ続けて早数年(笑)
他にもキャストいろいろ考えてたんだけど。全部はちょっと出せなくて…
てか ギャグなのに長過ぎ!(汗)



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