双子 -TWIN-
戦争終結からしばらく後。 ある日突然、キラとカガリはオーブ復興を手がける人々に 2人で一緒に来て欲しいと 呼び出された。 そして、自分らを送って来たアスランと共に3人でやって来たのだったが… 「「冗談じゃない!」」 見事にハモった2つの声が、広々とした室内に響き渡った。 「何を考えてるんだ 全く!」 輝く金髪の少女がダン!と前の机を拳で叩く。 同じ顔の、濃茶の髪の少年は それ以上の言葉を失くして深い溜め息をついた。 目の前に並ぶ笑顔を浮かべた大人達とは対照的に、片方は怒りを、片方は呆れを隠せずに 彼らを見返す。 見慣れた人、初めて見る人。様々いる中にはキラの両親もいた。 「そりゃ… オーブをお父様の娘である私が継ぐのは分かるし、キラが手伝ってくれるなら 助かる。けれど…」 だからって… 「―――どうしてそこで私達の結婚になるんだ!?」 カガリの隣でキラも賛同して頷く。 そう、2人が納得いかないのはそこで。 突然呼び出されて 開口一番に「お2人の結婚はいつがよろしいですか?」なんて言われて 納得できるわけがない。 それは当人達の意思を無視してるとか勝手に進めるなとかそういうこと以前に。 「…第一 僕らって双子じゃないですか。」 2人は血の繋がった正真正銘の姉弟で、さらに最も近い双子という存在で。 それがどこをどうしたら結婚なんてところに行きつくのか。 もちろん 僕らが双子であることを知った時はとても驚いたけれど。 今までの自分が覆されるような事実に2人ともどうすれば良いか分からなくて。 けれど、それを乗り越えて唯一血の繋がった存在としてお互いを認めて。 育ててくれた方を親としか思えなくても、自分達は双子。大切な存在。 それで解決したはずなのに。 「あら。キラ君は戸籍上ヤマト夫妻の子ですもの。法的に問題はありませんわ。」 「ってそういう問題か!?」 平然と言ったエリカにカガリが怒鳴る。 確かに問題はそこじゃないと思う。 けれど大人達の意見はそれで一致してしまっているらしい。 何を言っても無駄だな、という雰囲気がそこにはあった。 「私達も悩んだのよ。」 おっとりとした口調でそう言ったのはキラの母親で。 「私達が見ている目の前で抱き合った時には本当に驚いてしまって…」 ピクッ キラとカガリの後ろで黙って立っていたアスランの眉根が 微かに寄せられたのには誰も 気づかなかった。 いや、キラだけは後ろから漂う何かに気づいていたけれど。 「双子だと知らないとはいえ、2人が惹かれ合っていただなんて…」 ふぅ、と彼女は息を吐く。 「ウズミ様が心配なさっていたことが本当になった時は 貴方に伝えていなかったことを 後悔したのよ。」 「けれど、ナチュラルとコーディネイターを繋ぐ者としてこれほど適した者もいません もの。」 キラの母の言葉をエリカが繋ぐ。 「だからお2人が結婚していただければ良いなと思いまして。」 これからの世界には良い影響を与えると思いません? そう言って彼女は微笑んだ。 「「……」」 とりあえず突っ込みたい所は山ほどあるけれど。 だから 一体どうしてそこまで話が飛ぶんだろうか。 根本的には間違っている気がするけど、ある部分は正しいと思うよ。 でも確かに最初から気は合ってたけれど、そこには最初から恋愛感情なんてものは なかったし。 無意識に血が繋がってると分かっていたような、そんな感じだったから。 「あれは 別に深い意味とか無かったんだけど…」 カガリって抱きつくのがクセみたいな気がするし。 それにアレは「死ぬなよ」って、ただそれだけだったんだけどな。 「…深い意味が無くてあんな人前でできるもの?」 「で、できない…かな?」 母親の指摘にキラの語尾が弱くなる。 だって本当に僕達は… それに…… 「あんなの別に1回ってわけじゃないんだから良いじゃないか!」 ピシッ 「あ。」 言わないでおこうと思っていたことをカガリに言われて、キラはしまったと思った。 後ろからの視線が痛い。 さっき何かが割れた音がしたんだけど… 「…それは初耳だな。」 静かな声が後ろからして、キラはビクリと固まった。 だてに長く一緒にいるわけじゃない。彼が怒ってるかどうかくらいは分かる。 そして、アスランは独占欲が強いってことも。 「言う必要無いだろ!?」 分かっていないカガリは振り向いて怒りのままに怒鳴る。 「カ、カガリ…」 お願いだから火に油を注がないで… 彼女を苦笑いで宥めながら、アスランの方にも視線を配る。 カガリは自分がどれだけ大切に想われてるか分かってないんだから… そもそも今まで黙っていた方に驚いてしまうくらいだから。 アスランが1歩前に出る。 「あるさ。それは知る前か?」 上から降ってくるような声。抑揚のない声は重圧感があった。 「っそんなこと どうだって良いだろうが!」 あぁ…とキラは心で嘆く。 なんだってわざわざ怒らせるような言葉を選ぶかな… 頭に血が上っている今のカガリの状態では仕方がないとも思えるけれど。 それにアスランの方もカガリが反発するような態度だから。 「お前 私を疑ってんのか!?」 抑えていたキラの手を払い除けて、カガリはアスランに掴みかかる勢いで向かった。 「疑いたくもなるさ! 俺といる時より明らかに楽しそうじゃないか!」 「っ 何言ってんだお前は!」 カガリの顔が真っ赤になる。 「キラは兄弟だろうが!」 ……まぁ 良いか。 結局はただの痴話喧嘩だと思ってキラは間に入るのを止めた。 アスランが僕にヤキモチやいてたのには驚いたけどね。 「…どういうコト?」 ぽかんとしている大人達を向いて、キラはにっこりと笑った。 「カガリも僕も、想う人が別にいるということです。」 そう、カガリにアスランがいるように、僕にも。 今は傍にいないけれど。 「え…?」 「―――本当は皆さんに紹介しようと思って彼を連れて来たんですけど。」 紹介する必要無いみたいですね。とキラは2人の方を目だけで見た。 あれを見れば誰だって2人の仲が分かってしまうだろう。 「ナチュラルとコーディネイターの掛け橋に。それはあの2人にこそ可能なんだと思います。」 僕らがナチュラルとコーディネイターとして生まれてきた意味。 2つは別の種族ではないという象徴として。掛け橋として。 確かにみんなが言うことは間違いじゃない。 けれど、カガリの相手は僕じゃないんだ。彼女を支えているのはアスランだから。 そして。 「…僕も、迎えに行かなくちゃいけないから。」 今は遠い君。 僕が想うヒトは。 「遠い宙の向こうで平和の歌を歌い続けている彼女を、僕は支えてあげたいと思うから…」 地上はアスラン達が守るから。 僕は宇宙へ。 優しく強い 君の元へ… そして全ての世界に平和の歌を… END --------------------------------------------------------------------- 双子発覚したのでやっと書けた! 何故だかキラ視点。 おそらくラクスが出てこないからだと思われる。(てか何故客観的に書く) ほのぼのラブギャグバカップル(意味不明)のつもりだったんですが… 最後はちょっと真面目になってしまった… キララクはなんだか全てを超越した 壮大なスケールのカップルに見えるので… 遠くに居ても心は1つ。進む道は同じだから 心は常に隣にって。 逆にアスカガは一緒にいて育む現在進行形な感じかな。 最終回後って感じですが。 これはホントにただのギャグとして考えてたので、こんなラストはありえないと思う… コトの発端はハモる2人を書きたい。それだけだったので(死) あと、キラに対して嫉妬を覚えるアスラン… だってこの姉弟仲良すぎだもの…