希望
〜僕らの進む路は…〜
「ニコル……」 驚いた表情で アスランは前に座った彼を見返す。 戻らなければならない日、突然ニコルは彼のいるホテルの部屋へとやってきた。 そして、彼は自分の意志をアスランへ伝えたのだった。 「―――そういうわけですから。僕のことはいなかったと、言ってください。」 にこりと笑って彼は言う。 「お前は… それで良いのか?」 「はい。僕は彼と生きると そう決めました。」 心配するアスランをよそに、迷いも無く ニコルはそう答えた。 「…分かった。ニコル=アマルフィは もういないんだな。」 少し、寂しげにアスランが笑う。 「俺はまた1人、戦友を失ったんだな。」 「そう言わないで下さい。」 苦笑いしながらニコルは立ち上がる。 「僕は… いえ、僕達はいつでも待っています。」 そう言って 1枚の紙切れを台の上に置いた。 「連絡くらい、とっても構わないんですよ。」 呆然としているアスランに笑顔を向けて、彼は別れの挨拶を告げた。 リビングにノートパソコンを持ち込み、その前でキラが唸っている。 「けっこう、難しいかな。」 少し前から連絡を取り合っている"彼女"からの通信。 あまり思わしくない状況に キラは少々困り果てていた。 「でも どうにかしなきゃ…」 返事を出す為に、キーボードに指を滑らせる。 ピーッ ピーッ 「え?」 急にメールの到着を知らせる電子音が鳴る。 "彼女"は返事を出さない限りよこさないはずだし、他には誰も知らないはずなのに。 「一体 誰から…」 不思議に思いながら、キーボードのボタンを押す。 ――――――… 「どう、して……」 画面を見ながら、大きな瞳をもっと大きく見開いて、キラは呆然とする。 何故"彼"がこのアドレスを… そして、その内容にまた愕然とする。 「ただいま。」 「!」 弾かれるようにキラが見ると、彼はにこりと微笑み返した。 「ニコル、君…」 「ああ、さすがはアスラン。行動が早いですね。」 ニコルは彼の表情から全てを察する。 それは予想済みだった。 アスランならきっと、すぐにでも連絡を取るだろうと。 その言葉を聞いて、キラの顔から血の気が引く。 「まさか、記憶……」 「ええ。アスランに遭ったせいかもしれませんね。不意に全てを思い出したんです。」 事も無げに言って、キラの座るソファ越しに画面を覗き込んだ。 「あ、やっぱりアスランからですね。」 「ニコル… じゃあ何で…?」 震える声で言うキラを見て、ニコルは微笑む。 分からない、といった様子で、キラはそんな彼を見返した。 何故、微笑うの? 「だって、君は僕を憎……」 「憎んだりしませんよ。」 言葉を遮って、ニコルはそのままソファを跨いでキラの隣に座った。 「僕が記憶を失ったのは 確かに貴方のせいかもしれない。」 言葉がキラの胸に刺さる。 けれど 彼は続けて言った。 「でも、こうして一緒に過ごしてきた日々も確かに存在しています。僕が知っている"キラ"は 今の貴方ですから。」 「ニコル…」 「…僕はとても感謝しているんです。戦場でない、平和な日々を貴方は与えてくれた。それは かけがえの無い日々でした。」 穏やかに流れる日々は、貴方の優しさも充分教えてくれた。 全ては僕の為にしてくれたことだと知っている。 笑顔を守りたい、そう言ってくれる優しさが本当の貴方だと、僕は思うから。 「これからは僕にもお手伝いさせてくださいね。」 パソコン画面を指差して、ニコルはまたにっこりと笑った。 「うん。…ありがとう。」 許されたことの嬉しさ。 今まで重かった何かが消えて、心は嘘のように明るく軽い。 「そういえば、アスランはなんて?」 ニコルに言われてキラも画面に視線を移す。 「え、えーとね… "キラへ ニコルから全部聞いたよ。……" 」 ――――― To キラ キラへ ニコルから全部聞いたよ。 お前、独自に争いを避けて戦争を終結させようと方法を探してるんだな。 この間は… 逃げてるなんて言ってゴメン。 キラはちゃんと前に進もうとしてるよ。 俺も…いつか、いやきっと近いうちにそっちに行くから。 From アスラン ―――― 「…短いですね。」 「でも、アスランらしいよ。」 言って、2人は顔を見合わせると クスクス笑った。 END --------------------------------------------------------------------- 収入とかそういうのは気にしない気にしない。 きっとキラが稼いでいるのです。(どうやって) …29話を見る前に夢見たかったんです…… キラがニコルを… 信じられなくてできる限り現実逃避。 つまり、「ニコルと一緒にキラも行方不明」。 絶対あり得ない展開でも良いんです。 ただ私がそう思いたかっただけですから。 これが私の中の理想のストーリー展開なんですけどね…(苦笑) でもコレ、あくまで友情とかでキラニコでは無いです ホント。 前半めちゃくちゃ新婚生活vしてても あくまで友情。 友情ったら友情。 最初のアスランってちょっと悪者っぽーい(笑) とか思いながら書いてました。