雨の休日 −キララク編


「止みませんわね…」
 朝から絶え間なく降り続いている雨を見ながらため息をつく。
 窓ガラスに触れている指先にも雨が当たる音が響いて。
 強い雨は遠くの景色をも遮っている。
 外に咲く花達もうなだれて悲しげだった。

「ツマラナイ ツマラナイっ」
 足元で跳ねているピンク色のハロを抱き上げてつつく。
 掌の中でくるんと回りながら、ハロは同じ言葉を繰り返した。
「…本当に。」
 1人きりの休日はつまりませんわね。

 予定なら今頃4人で遊びに出かけていたはずなのに。
 急に仕事が入ってしまって、男2人は互いの彼女に謝ってから仕事場へと朝から行っていた。
 それはしかたないと思うことだけれど。
 けれど、このぽっかりと空いてしまった時間をどうすれば良いか分からなくて。
 何もしないまま無駄な時間は過ぎている。

「晴れているなら貴方と散歩に行けますのに…」
 もう一度つついたら、「オマエモナー」と返ってきて少し笑った。


 ♪♪
 突然の着信、その音に胸が高鳴る。
 それは"彼"専用の特別な音。
 待たせるのも惜しくて 急いで携帯を手に取った。

「どうしました?」
 心なしか声が弾む。
 受話器の向こうからはそんな彼女に気づいた彼の、可笑しそうな笑い声が聞こえた。
『退屈してるんじゃないかと思って。』
 その声はどこまでも優しくて。
 電話をくれた優しさが嬉しくて。
「―――声を聞いたら全部吹き飛んでしまいました。」
 それが心からの言葉で。
 だって、私の気持ちに気づいてくれたから。
 …彼は冗談だと思ったみたいだけれど。
『あまり長くは話せないけど、時間がくるまでは大丈夫だから。』
 彼はまだクスクスと笑っていた。


 本当にギリギリまで話を聞いてもらって電話を切った。
 ついでに夕食を一緒に食べる約束まで。
 でも、今日の埋め合わせはこれとは別。
 今2人で調整しているところだそうですわ。

 退屈だと思っていた気分はどこかへ行ってしまって。
 次の楽しいことに意識は奪われて。

「どうしましょうかしら♪」
 雨のことなどすっかり忘れ、上機嫌で部屋から出ていった。







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