聖母 −話し方−


「キラ… 俺 ずっと疑問に思ってたことがあるんだけど。」

 食堂で、昼食を取っている時にトールが神妙な顔で突然切り出した。
 アカツキを膝に乗せていたキラが、それに顔を上げる。

「何? 急に改まって。」
 キラはトールの正面、トールの右隣にはミリアリア。
 フレイはキラの隣に座ってアカツキにスプーンでスープを飲ませている。
 そのさらに隣に2人分のカップを持ったサイが戻ってきて座った。


「―――なんでキラって男口調なんだ?」
「…え?」
 意外な質問だったのか、キラはきょとんとしてしまう。

「変、かな?」
「別に もう慣れたから変とは思わないけどさ。ただなんでかなぁって。」

「そういえば最初見た目とのギャップに驚いたのよね 私。」
 そう言ったのはミリアリア。
「はは。ミリアリア、僕が名乗った時ぽかんとしてたもんね。」

「…でさ。なんで?」
 トールが逸れそうになった話題をすかさず修正する。
 そのタイミングはさすがに慣れたものだ。
「なんで、って…」



「俺の口調が移ったんだよな。」

 声はキラの頭上から聞こえた。

「アスラン。」
 首だけ後ろに傾けて上目遣いに見ると 食事のトレイを片手で持った藍髪の青年の顔が目の前に
 ある。
 挨拶代わりのキスを額に受けて笑顔で返し。
 そしてその傍ら、もう1人いるのに気づいてキラはそちらにもにこっと笑った。
「―――ニコルさんもこんにちわ。今から2人も昼食ですか?」
「はい。僕達もここ良いですか?」
「どうぞ。」
 アスランは当然の如くキラの隣にトレイを置いたので、ニコルはその正面に回って座った。


「? でもアスランの一人称は"俺"だろ?」
 座ったのを見計らって すかさずトールが疑問をぶつける。
「昔は"僕"だったんだ。といっても10くらいまでだったけどな。」
「いつも一緒だったから自然と移っちゃって。父さんも母さんも無理に直そうとしなかったから
 そのままになったんだよ。」

「…なんかすっげー仲良かったんだな。」
「うん。友達っていうよりもうキョーダイみたい?」
 そう言ってキラは嬉しそうに表情をほころばせた。
「アスランはとってもしっかりしていて、僕は頼ってばかりだったんだ。」

「キラにとってアスランさんはお兄さんなのね。」
 ミリアリアがクスクス笑う。
「本当は僕の方が5ヶ月上なのに。何でもアスランには敵わないんだよね。」
「あら。たとえば?」
「えーと―――…」



「キョーダイ、ね…」
「アスラン? 何か言いましたか?」
 アスランの表情が曇ったのに気づいてニコルが尋ねてきた。
 それに"何でもない"と首を振って 笑顔で話す横顔を見つめる。



「……」

 アスランの心の呟きはキラには届かない。







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自分への疑問に答えてみた。

サイ達とアスラン達はそれなりに仲が良いです。
みんな若いので打ち解けるのも早いんです。(若いといっても18〜20くらいですが)
この頃の問題といったらキラとアスランの関係だけです(苦笑)



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