Lost child −≪09≫


 少し遅れてやってきた彼女の隣には知らない男の人がいて。
 けれど、彼女の嬉しそうな顔と泣いたのか赤い目を見て誰だかを悟った。

 そして、僕の役目は終わったのだと…

 心から良かったねと思う中で 少しだけ寂しく思ったことは、胸の奥に秘めておくことにする。


 アリアの恋人の名前はセイルと言って、アリアが間違えたのも何となく分かる気がした。
 彼の方が少し背が高くて長い髪を後ろで束ねているくらいで、気は合いそうだなと思ったから。
 アリアは困ったように笑う仕草が似ているのよね、とか言っていて。
 言いながらもピッタリと寄り添って離れようとしない姿は よほど嬉しいのだということが知れた。


 …ただ、アスランだけは似ていないと言い張っていたけれど。
 その理由は 聞かない方が良いと思って聞かなかった。











 祭りが終わったその翌日にはもう町を出ると決めていた。
 もうアリアは心配要らないし、この町には長く居過ぎたから。
 それに、今なら祭りに訪れていた大勢の旅行客に紛れてしまえるのも理由だ。

 2人の知り合いに国際ポートがある都市まで送ってもらえることになって、2人は玄関まで見送りに
 出てくれた。

「…戻るの?」
 また世界の中心へ…
 キラの事情を知る彼女は心配そうな顔で尋ね、キラはにこりと笑う。
 その表情は迷いを吹っ切った様子で とてもすっきりしていた。

「戻らないよ。行くんだ、僕らは。」

 どこへとは言わなかった。
 キラ達もまだ決めていなかったから。



「元気でね。私、貴方がいてくれたからまた笑えるようになったのよ?」
「…僕も、アリアに会えて良かったよ。」
 アリアの額に親愛の意味を込めたキスを送る。
 突然のことに真っ赤になる彼女に キラは晴れやかに微笑んだ。

「これ 君にあげる。」
 キラがそう言って彼女に差し出したのは1本のリップスティック。
 彼の手元に残る、唯一の"彼女"のもの。
「僕が持ってると過去にばかり囚われてしまうから。だからアリアが持っていて。」
「これは…?」
 アリアはフレイのことに関しては何も知らない。
 意味も分からず首を傾げる彼女の手に重ねてぎゅっと握らせた。
「使えって言ってるんじゃないんだ。ただ、君に持っていて欲しい。…フレイによく似た君に。」
「え?」

 幸せな彼女が持っていれば、フレイも幸せになるみたいで。
 そんなこと、ただの自己満足に過ぎないのだけれど。


「深く考えないで。君が幸せならそれで良いんだ。」
「? 私は幸せよ。セイルが帰ってきてくれたもの。今、とても幸せだわ。」
「良かった。」

 フレイと同じ声の少女。
 幸せだと彼女が言ってるみたいに聞こえて泣きそうになる。
 それに気づいてか、アスランが頭をぽんと叩いた。


「―――さよなら、アリア。また来年、きっとここに来るよ。」
「ええ、待ってるわ。だから絶対よ?」
 ジープから手を伸ばして最後の握手を交わす。
 そして来年の約束を胸に キラは彼女に別れを告げた。








「キラ、次はどこに行く? …キラ?」
 黙ってしまったキラの顔を覗き込み、苦笑いしたアスランはキラを抱き寄せる。
「寂しい? 残りたかった?」
 力がこもっていない拘束は すぐに解くことはできる。
 けれどそれをせずに キラはただゆるゆると首を振った。
「また来年会いに行けば良いし… アスランも一緒だから良い…」
 甘えるように擦り寄ってくるキラを好きにさせて、代わりにアスランもキラの髪の感触を楽しむ。


「…今度会うときは僕達も負けないくらい幸せになっていようね。」
「そうだな。」
 キラの呟きに アスランも笑みで返して。




 迷子から自由な旅人になった2人の、旅は始まったばかり―――







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管:終わりました〜 長かった!
アリ:ホントにね。…ちょっと、序章が2003/10/8になってるわよ?
管:……。06までは順調だったんだけどね(遠い目)
アリ:アスランとキラが再会したから満足したって本当?
管:…アタリ。深く考えてなかったから種明かしが面倒だったのも理由。
アリ:この面倒臭がり。
管:…反論の余地も御座いません……
アリ:まぁ良いわ。セイルも戻ってきたことだし。ね?
セイル(以下セイ):うん、ただいま。遅くなってごめん。
アリ:良いの。だってちゃんと戻ってきてくれたから。
管:実は当初の予定じゃ戻ってこないはずだったんだけどねー
アリ:!? ちょっとそれどういう意味!?
管:キラフレ要素入れるつもりもなかったから アリアが幸せになる必要なかったのよね。
アリ:管理人が気まぐれで良かったわね、セイル。
セイ:ホントだね。管理人さん、僕が戻って来れなかった理由は書かないんだよね?
管:まぁね。ここアスキラメインだし、オリキャラに思い入れのある人はいないでしょ。
    一応理由は記憶喪失だった、ってことだけど。
アリ:そうだったの。
セイ:記憶が戻ってすぐ戻ってきたんだ。
アリ:ありがとう。
セイ:どういたしまして?(笑)

キラ:…やっぱり似てない?
アス:似てないだろう、全然。
キラ:そうかなぁ? アリアの友達とか みんな似てるって言うけど。
アス:カガリやラクスだったら違うと言うと思う。
キラ:なんで?
アス:彼はキラのように愛らしくて可愛いって感じじゃないだろう?
キラ:…愛らし……
アス:思わず引き寄せたくなるような腰、キスしたくなる柔らかい唇、抱きしめると心地y(殴)
管:それ以上のセクハラ発言は認めません。
キラ:……(助けない)。せめてセイルさんぐらいの背があったら良いのに…
アス:(復活) なくて良いよ。俺より背が高かったら抱きしめら(蹴)
管:いい加減にしなさい。


管:ともかく、お付き合いありがとうございました!





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