42話パロ
「まさかあんなものまで持ち出してくるなんて。びっくりしたよ。」 ガラス越しに見えるエターナルを見下ろして、キラは本当に驚いた様子で言う。 「そうですか?」 元々エターナルの奪取も計画の中に入っていたことだ。驚くほどのことではないはず。 少なくともラクスの中ではそうだ。 そう思って問い返すと、キラは驚くのが当たり前だと言って深く頷いた。 「だって戦艦だよ? フリーダムだけでも十分驚いたのに。しかもザフト一の高速艦だって言う し。」 興奮した様子の彼女にラクスはくすりと笑う。 そして彼も自分の戦艦へと視線を向けた。 「そうですね。でもそれはそれだけ同じ思いを持つ人達がいるということです。私一人ではさ すがに無理ですから。」 いわゆるクライン派と呼ばれる者達、彼等の協力なくしてはここまでのことはできない。 多くの協力者がいたからこそ 行動することができたのだ。 その中にはキラもいる。 そして今はアークエンジェルやオーブまで。 「…"仲間"とは良いものですね。」 ラクスが言うとキラもそうだねと言って笑った。 「でも、本当に無事で良かった。心配してたんだよ?」 言葉は上辺のことではなく きっと本心から出たもの。 本当にホッとした様子でキラははにかむ。 「ありがとうございます。」 キラの言葉にラクスは笑顔で返したつもりだった。大丈夫だと。 けれど彼女は心配そうな顔で手を伸ばしてきて。 「…どうしたの?」 尋ねる言葉と同時に頬に触れた温かな掌。 それに驚いたのはラクスの方だ。 「キラ…?」 「辛そうな顔してる。…何かあった?」 「……っ」 正直、気付かれているとは思っていなかった。 完璧に笑っていたはずなのだ。現に今まで誰も気付かなかった。 なのに 彼女は、 「あっさり見破らないでください…」 苦笑いしかでなかった。 張っていた気が抜けて、ラクスは彼女の肩に頭をもたげる。 キラは何も言わなかった。 「父が… 死んだんです…」 ポツリと呟けば、キラの身体がギクリと強ばる。 ラクス自身、その時初めて父が死んだという現実を認識した。 ひどく胸が痛んで、重力があればそのまま座り込んでしまいそうで。 助けられなかった。危機を知ることもできなかった。 そして遺体にすら会うこともできない。 尊敬していた、自分の父。 失ったけれど今まで涙も出なくて。 それは状況のせいだろうと。 そして確かにその通りのようだった。 「…我慢しないで。」 後ろに回された手でポンポンと頭を叩かれる。 泣いてしまった自分をキラは笑ったりしなかった。 それが当然だと受け止めてくれた。 少し顔をずらすと、彼女の頬にも滴が一筋伝ったのが見えた。 それが、あまりに綺麗で――― --------------------------------------------------------------------- ラクス様が男ならこれくらいの男らしさはあるかなぁと。 キラの前で初めて泣けたラクス様萌え。