スーツCD8パロ




 ミーア(偽キラ)のコンサート映像に見入っているバルトフェルド。

「良いねぇ〜」
「何がですか?」
「うぉ!? キ、キラ! いつの間に!?」
 突然背後から声をかけられて驚いて振り返れば、そこにはきょとんとした顔でキラが立ってい
 た。
「え? だって何度も呼んだのに返事がなかったので。勝手に入っちゃいました。」
「そ、そうか。それはすまなかった。」
 呼び出し音にも気づかないほど見入っていたのか。
 どこから見られていたのか不安になったが、聞くこともできず バルトフェルドは誤魔化すよ
 うにコーヒーを口に含んだ。


「何を見てるんですか?」
 聞く形をとっていながらも返事を待たず、キラは今まで彼が見ていた画面を覗き込む。
「…あ、もう一人の僕の───これはライブ映像ですか?」
「あ、あぁ。情報収集の一環でな。」
「へー さすがはバルトフェルドさん。」
 素直なキラは純粋に感心したようで。
 それに罪悪感を覚えるが、やはり彼は何も言えなかった。

「…男の人ってこーゆーのが好みなんですか?」
「え? あ、まぁ、若い連中はそうかもしれんな。」
「…やっぱり僕とは違うなぁ…… 僕にはできないよ。」
 こんな格好をして、人前でこんな風に歌ったり踊ったりするなんて。
 自分の身体と彼女を見比べて、さらに溜め息をつく。

「そんなことないぞ! キラにもきっとできる!」
 彼女の言葉に 彼が何を思ったか分からないが。
 言って バルトフェルドはおもむろに映像プログラムを取り出した。
「これは先日リリースされたシングル"EMOTION"だ。これで踊ってみろ!」
「えぇっ!?」





 ―10分後―





「そうや! その調子! ───完璧や!」
「本当ですか!? やったぁ♪」
 達成感でキラも嬉しそうに笑う。
 相手の口調が変わっているのは気にならないらしい。


「バルトフェルド隊長、こちらにキラが───」
 と、そこへラクスが入ってきた。
 手を取り合って何やらはしゃいでいるその様子が気に入らなくて、ラクスはキラの肩を掴んで
 引き寄せる。
「2人で何をしてたんですか?」
「あ! ラクスも見て! 僕、頑張ったんだ。」
 いつになくハイテンションな彼女にラクスは驚くが、それがまた可愛らしいと思う辺り 彼も
 末期症状だ。
 そんな思いは露知らず、キラはラクスを手近な椅子に座らせ 鳴り出した音楽に合わせて踊り
 出した。



「…ハイ…?」

 固まるラクスをよそに、キラも虎もノリノリで。
 飛び跳ねるし、回るし、ウインクはするし。

 1曲終わったときには2人とも達成感で清々しい表情をしていた。




「どお? 可愛い?」
「…。可愛いかと聞かれたら、それはキラですから可愛いに決まっていますが…」
「「が?」」
 ラクスの評価に2人とも興味津々で 身を乗り出してくる。
「…それ、あの"キラ"の歌でしょう?」
「うん、そうだよ。」
「…何故キラが偽者の真似を?」
「え…… それは… なんだか楽しそうだったし… みんなあーゆーのが良いのかなぁって…」
 どことなく怒っているようなラクスを見て、キラの語尾が弱くなる。

「───私は今のキラの方が好きですよ。儚げで、でも強い、そんな貴方が。」
 けれど、彼はすぐに笑顔に変えて。
 聞いている方が恥ずかしいセリフをさらりと告げた。
「ラクス…」
 告白も同然のセリフに、キラは思わず感動してしまう。
「今のままのキラの方が何万倍も可愛いんですから、貴方は貴方のままでいてください。」
「…うん!」
 彼の言葉はよほど嬉しかったらしく。
 ラクスの優しい笑顔に キラもはにかむように笑った。



「では行きましょうか。」
「うん。」
 キラの腰を引いて連れていく途中、ドアの前でラクスが振り返る。
「―――そういうわけですから。バルトフェルド隊長、キラに余計なことを教えないでくださ
 いね。」
「…了解した。」




 2人が出ていった後、1人残された虎はライブ映像を見つつ、

「…ラクスの奴、本当にキラが絡むと怖いな…」

 と、ぼやいていた。




 終わり。



 



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キラとラクスがラブってるのってまさかこれが初めてでは…!?
スーツCD8って全体的にキララクなんですけど、
最後はやっぱり「行きましょう?」「うん。」で、ラクス様は男前だなと思いました。



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