36話パロ(黒ラクス様side)




「ラクス。」
「はい?」
 警戒のために アスランはラクスに銃を向ける。
 もちろんそれでラクスが驚くなんてことはない。
 脅しにもならないことは分かっていても、今は向けるしかなかった。

「どういうつもりだ?」
「どう、とは?」
 あくまで白を切るつもりなのか、逆に返されてしまう。
 けれど、こちらも引くわけにはいかない。
「スパイの手引きだ。何故あんな馬鹿なことをした。」
「馬鹿とはなんですか。私はただキラに渡しただけです。」
「…キラ…?」
 自分の耳を疑った。
 今、ラクスは何と言った?
「そう、貴方が殺そうとしたキラです。」
 聞き間違いではなかったらしい。
 さらにはあまりにはっきりと事実を突きつけられて、言葉はアスランの胸にグサッと深く突き
 刺さった。
「ちゃんと生きていますが。…全く、あんな可愛い少女を本気で殺そうとするなんてどんな馬
 鹿でしょうか。」
「し、仕方無いじゃないか! キラは地球軍だったんだ!」
「貴方の事情なんて聞いてません。何であれ殺そうとしたのは事実でしょうが。」
「うっ」
 必死の弁解もラクスの一言で一蹴される。
 それには返す言葉もなかった。


「キラはとっくに地球に降りたんですよ? 貴方もさっさと追いかけなさい。」
「追いかけ、って…」
 完全に命令形だ。
 否定という選択肢はアスランに用意されていないらしい。
「今回特務隊に任命されて ジャスティスを受領したんでしょう? それに乗ってキラの所に行
 けと言ってるんです。」
「だからどうして知ってるんだ… は、ともかく。俺にザフトを裏切れと言うのか?」
「別に。嫌なら良いんですが。その場合、またキラと敵になるだけですよ。」
 キラを殺したことが完全にトラウマになっているアスランは、彼の言葉に思いっきり動揺して
 しまう。

「…あぁ、でもキラに心労はかけたくないですね。じゃあこの場で死んで下さい。」
 とんでもないことをラクスはあっさりと言って。
 おもむろに銃を取り出しアスランに向けた。
 慌てたのはアスランだ。

「ちょっと待て!」

 一応数年来の親友にいきなりそれか!?
 しかしラクスは涼しい顔。

「道は2つに1つです。ジャスティスを受領したふりをしてキラの所に行くか、それともザフ
 トのアスラン・ザラとしてこの場で殺されるか。どっちが良いですか?」
 銃を向けられてさえいなければ、実に爽やかな笑顔だ。
 でも これでは…
「…完全に脅しじゃないか…」
 どうやら考える時間も与えられないらしい。

 道は当然ひとつ。
 アスランがラクスに勝てるわけがなかった。









 終わる。



 



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こっちが本命。シリアス編はクッション材です。
あれを書かないと黒様も本編に引っ張られそうだったので。



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