−−−小話−−−






☆10話
イージスのコクピットが開く。 同時にストライクも開いて、キラは後ろにいるラクスを振り返った。 「何か彼に言って下さい。貴方だと確認してもらわないと。」 「あぁ そうでした。―――アスラン、ご苦労様です。」 身を乗り出して手を振れば、アスランは苦笑いしたようす。 「…確認した。」 どこかホッとしたような声が返ってきた。 「…一緒に来てくれないんですか?」 もう1度、ラクスは同じ言葉を繰り返す。 けれどキラは哀しげに首を振った。 「はい、友達がいますから。それに…」 落ちた沈黙に、ラクスは顔を顰める。 "信じてる" キラ達を送り出した彼女の友人が叫んだ言葉。 それはキラには重すぎた。 「私も残りましょうか?」 1人にするのが危うくて申し出たけれど、それにはキラが必死で反論を返してきた。 「っダメです! 戻らないとこれ以上の貴方の命の保証はありません!」 人質として利用されたラクスだが、あの艦にいればこの先も利用される可能性がある。 ラクスとしては自分のことより彼女の方が心配だったが、彼女もまたそうであったらしい。 自分より相手のことが優先で、その為なら相当の無茶もする。 今のこの状況も、協力者がいるとはいえ かなり危険な行為なのだから。 「…本当に優しい方ですね。そんな顔をされては強くも言えません。」 ラクスは苦笑いをすると コクピットの外に出る。 振り返ってもう1度、彼女の瞳を真っ直ぐに見た。 「それではキラ。またいつか、今度はゆっくりお茶でも飲みましょうね。」 「…はい。」 ふわりと、ラクスの身体がストライクのコクピットから離れた。 「ただいま、アスラン。」 自身も外に出て待っていたアスランに、軽く手をあげて挨拶を寄越す。 それに素っ気無くああ とだけ返すと、彼はキラの方を見た。 「…キラ。お前も…!」 「ストップ。それ以上は言わない方がキラのためです。」 予想通りの行動に呆れつつ、ラクスは彼の言葉を制する。 「ラクス…!?」 「アスランの言葉はキラには強すぎるんです。彼女を傷つけないであげて下さい。」 驚く彼を軽く睨んで、反論の言葉すら封じた。 そう言われてしまっては アスランも何も言い返せなかった。 言いたいことはたくさんあっても、彼女を傷つけたくはない。 「キラ。アスランのことは任せて下さい。ありがとう。」 「ラクス さん…」 ラクスは笑顔で手を振り、黙ってしまったアスランをコクピットに押し込んで自分も入る。 そして互いに閉じた、その瞬間にアラームが鳴り響いた。 「「!!?」」 ヴェザリウスから隊長機と、それを見越していたのかメビウスゼロが飛び出す。 驚き固まっているキラとアスランとは別に、1人冷静でいたラクスがすかさず回線を開いた。 「クルーゼ隊長。一体何をするつもりですか?」 冷たい声音。 けれどそれで動じるような相手ではない。 「我々は軍人です。あれを逃すわけにはいかないのですよ。」 彼の言葉は正論だ。けれどラクスは引かなかった。 「…追悼慰霊団代表であるこの私の目の前で戦闘を行うことは許しません。最高評議会を敵に 回すつもりなら止めませんけど。」 ラクスの言葉にアスランは驚き、クルーゼは渋々ながらも手を引く。 「ラクス… 君は…」 「助けていただいた礼ですよ。今この時だけでも貴方達が戦わずにいられるように。」 一瞬だけかいま見せた厳しい表情を消して、ラクスはいつものように軽い笑顔で笑った。 ※オマケ 「…コクピットに男2人は狭いですね。」 「悪かったな。」 「というか潤いがない。」 「今ここでそれを求めるお前がおかしいと思うが。」 「やっぱりキラごと連れ去るべきでしたね…」 「さっきと言ってることが違ってるぞ。」 ---------------------------------------------------------------------
☆46話
キラの部屋から出たカガリとアスランの会話 「何すんだよ!?」 無理矢理連れ出されて苛つき、カガリは乱暴にアスランの手を振り解いた。 「今は… そっとしといてやれ。アイツ、なんかボロボロだ」 静かに諭されるように言われ、ぐっと言葉に詰まる。 彼女がどれだけ憔悴していたかは、ちょっと見ただけでもすぐに分かるのだから。 「…っ分かったよ!」 大切なキラの為だと 渋々ながらに承諾し、しかしすぐにくるりと振り返って部屋のドアを開 けようとする。 「だから待てって。」 今承諾したんじゃなかったのか?と彼女の腕を掴んで止めれば、ギッと睨まれた。 「今はラクスに任せて…」 「おけるか! 何も言わなきゃ良いんだろっ 私も一緒にいる!」 そう言って絶対に自分の意見を曲げようとしない。 さすがにアスランも不審に思った。 「…何を そんなに慌てて…」 「バカ! ラクスは男なんだぞ!? そしてキラは女だ。2人きりなんかにできるか!」 …それはつまり…… 「いや… ラクスは紳士だし…」 「いーや。弱ったキラなんかどうぞ押し倒して下さいとでも言ってるようなもんだ。いくらラ クスでも危険だ!」 「……」 さすがに否定できなくて、アスランも黙り込んだ。 アスランから承諾をもらったカガリがドアを開けたら、ラクスがキラを抱きしめていて。 それを見たカガリお姉様がブチ切れるのは 数秒後。 ---------------------------------------------------------------------
☆運命21話
要はミーアがアスランのベッドに潜り込むアレ。 ルナマリアを追い出した後。 「どういうつもりだ!」 「だってあの子…」 「だってじゃない!」 アスランの剣幕に、さすがのミーアもばつの悪そうな顔をする。 「だいたいどうして君がここにいるんだ!?」 昨日は確かに鍵をかけて寝たはずだ。 なのに何故、朝起きたら彼女が隣で寝ているのか。 「え、だって久しぶりに会うのよ? 普通はこうならない?」 「!?」 そのとき初めて、アスランは彼女の中に生じているとんでもない誤解に気づいて驚いた。 「俺とキラはそんな関係じゃない!」 「えっ? どうして?」 アスランの言葉にミーアは本気で不思議そうな顔をする。 「だって幼馴染でしょう? 小さい頃からずっと一緒に育って、彼女を守るために父親と敵対し てまで軍を抜けたのに? なのに違うの?」 (プラントではそんな話になってるのか…) 「とにかく、俺とキラは幼馴染で親友だ。それ以上でもそれ以下でもない。」 「ウソォー!? こんなに可愛い子に恋心も抱かず、手も出してないの!? アスランっておか しい!」 「そう言われてもな…」 自覚したときにはすでにキラにはラクスがいて、気づけば自分もカガリと恋人になっていた。 おかしいと言われたところで 事実なのだから仕方ない。 そもそも、姿はいくらキラそのものだとしても 実際は出会ってそう間もない少女にそんなこ とを言われる筋合いも無い。 「…もう部屋に戻ってくれ。」 なんだか全てが馬鹿らしい。 朝から無駄に疲れてしまった。 「朝食一緒に食べてくれる? じゃなきゃ戻らない。」 「…好きにしろ…」 もうどうでも良くなって、アスランは半ば投げやりに答えた。
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