in モルゲンレーテの自販機前
ずらりと並ぶ自販機のボタンを指でなぞる。
あまりの種類の多さに どれを飲もうかと迷ってしまった。
烏龍茶から炭酸飲料まで、ここでは飲みたいと思う物ならほとんどが揃っている。
だからこそ、今は悩んでしまうのだ。
紫の瞳をゆっくりと左右に移動させながら、彼は思わず唸ってしまった。
でも後ろを待たせるわけにはいかないし…
「―――カガリは何飲む?」
決めるのを諦めて、キラは振り向き尋ねた。
自分の分は後回しにしよう。
「ん〜 じゃあレモンスカッシュ。」
訊かれた彼と似た…しかし幾分女らしい面立ちの少女は 特に悩みもせず答える。
「了解」
ピッ
カタンと紙コップが落ちる音がして、氷が注ぎ込まれた後 勢いよく液体が流れ込む。
完了の電子音が鳴ると、キラはそれを取り出し彼女に手渡した。
「サンキュ」
「よっ お前等もここだったのか。」
そう言って彼は軽く手を挙げる。
「ディアッカ。アスランも。」
「そっちも休憩か?」
並んで歩いてきた2人に キラとカガリも挨拶を返す。
昼の太陽と夜の空という対照的な髪の色と同じく、雰囲気も対極に位置する2人。
前は仲が悪かったと聞いたけれど、今は全くそういうことは無いらしい。
「あ、ディアッカ、何が良い?」
ピッとボタンを押しながら キラが訊いた。
「俺? コーヒーのブラック。」
「分かった。ちょっと待って。」
そう言って 中に入っている紙コップを取り出す。
「はい、アスラン。」
「…あぁ すまない。」
当たり前のように交わした後で「ディアッカはブラックだったよね」と言いながら キラはまた
前に向き直った。
「「………」」
「? 何?」
無言で2人から見つめられて、ディアッカに手渡しながらキラは首を傾げる。
「いや… さすがだな、と思って…」
今 何も聞かなかったよな…
これだけの種類がある中で 訊かなくても迷わず選べる関係ってどうなんだろう。
そこで初めてキラは気がついて あっと声をあげた。
「ゴメンっ いつものクセで押しちゃった。アスラン それで良かった?」
「ん? ああ。」
元々これを飲むつもりだったし、とアスランも応える。
「クセ…?」
カガリの呟きに気が付いて、キラは彼女の方を向いた。
「うん。アスランっていつも同じモノしか飲まないから。」
いつ聞いても同じ答えしか返ってこないから、いつからか訊かずに買うようになった。
だから今も何も考えずに押してしまったわけで。
「―――変わってなかったんだね。」
くすりとキラが微笑うと アスランは少し分が悪そうな表情をした。
「…よく覚えてたな。」
「そりゃ あれだけ毎回のことだとね。」
覚えてたというより身についちゃってたという方が正しいのかもしれないけど。
「あ、僕 何飲もう…」
自分だけ選んでいなかったことに気づいて、また自販機の前で唸る。
いくらなんでも種類が多過ぎるよ ここ。
「何でも良いじゃないか。そう言ってまた 悩んだ挙句飲まないつもりか?」
呆れた声で言われて、キラは振り返り じっと睨むように彼を見た。
「…嫌なこと覚えてるね。」
「お互い様だ。」
それも1度や2度じゃないんだから。
「……入り込めないな。」
「同感。」
言って2人は目を合わせる。
「「……」」
特に接点の無い2人だが、今の意見は一致したようで 顔を見合わせると可笑しくて笑って
しまった。
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じゃれ合う幼馴染同士が好きですv
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