折花
「貴様がフリーダムのパイロットか。」
開口一番 上から圧力をかけるような言い方で言われた。
後ろでディアッカが呆れた顔をしていたから きっと元々こんな性格の人なのだろう。
それだけでアスランと衝突ばかりしていた光景も簡単に想像できた。
―――イザーク・ジュール。
アスランやディアッカの同僚で、デュエルのパイロット。
あの、"デュエル"の……
「ディアッカから聞いた。前はストライクに乗っていたことも、アスランの親友だというこ
とも。」
それで、何を言うつもりなのだろう。
強い眼差しで睨まれて そして言われることはきっと良いことじゃないのだろうけれど。
でも、それくらい分かりきったことだし。
「……それを聞くまではニコルやミゲルを殺したこともこの傷を負わせたことも、許すつも
りなどなかったんだがな。」
「え?」
彼の表情が少し和らいだことにキラは驚いた。
「一発殴らせろ。それでチャラにしてやる。」
「イザーク!?」
それにはさすがに ディアッカが焦った声をあげる。
ギョッとして間に入るが それを制したのはキラ本人だった。
「良いですよ。」
「キラ!?」
今度はサラリと答えるキラに驚く。
「その代わり、―――これを貰ってください。」
ディアッカの制止も片手で拒否して、そうしてキラが彼に差し出したのは小さな折り紙の
花だった。
戦場には不似合いな可愛らしいそれを見て、イザークは怪訝そうに眉を顰める。
「何だ? これは。」
「貴方が僕から奪ったものです。意味は分からなくても良いですよ。」
分かってもらう必要はなかった。ただキラがその事実を欲しがっただけだ。
首を傾げて問う彼に キラは表情も変えず淡々と告げる。
「詳しく話せ。」
分からなくても良い なんて、それで納得できるわけがない。
単語にも引っ掛かりを覚えて詰め寄る彼に、けれどキラはただ首を振った。
「嫌です。だって言ったら貴方はこれを受け取れなくなる。」
「良いから話せ。俺が受け取れなかった場合は一発殴る話も無しにする。」
引く気がない様子の彼に 仕方なくキラの方が折れる。
折花を一度じっと見つめた後、心を落ち着ける為に深々と息を吐いた。
「………分かりました。」
それは 長くもなく短くもない話。
キラが守れなかった小さな少女の――― そしてイザークの心に刻まれてしまうであろう、
1つの事実。
「…だから話したくないと言ったでしょう?」
話し終わったキラが苦笑いして 黙ってしまった彼の顔を覗き込む。
「貴方が そんな顔をしてしまうのが分かっていたから…」
折り紙の花は、キラの手に握られたまま、、、
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イザキラではないです。
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