伝説の始まり


「どうしても受けてくれないか?」
 教師が困った顔をしているが 対するキラの方もそれと同じくらい困っていた。

「そんなコト言われても僕じゃ無理ですよ。他にいないんですか?」
 アスランならともかくキラは自分がこの学園を率いるほどの能力はないと思っている。
 それを人は謙遜しすぎだと言うけれど、そんなことはない。
 こんな自己中人間が人の上に立てるわけがないし、僕には広く周囲を見渡し臨機応変に対
 処する力もない。
 どう考えても生徒会長には向いてないと思う。
「でもなー… お前がダメなら次はザラに頼むことになるんだが。」
「え……」
 それはどうしよう、と思ってしまった。
 アスランなら見事に率いてくれるだろう。きっと彼は誰よりも向いている。
 でも 1人で何でも抱え込んでしまう彼だから、苦労するのも目に見えていた。
 それを考えるなら自分がやった方がまだ―――…

「―――俺がやります。」
「!?」
 キラの背後からすっと手を挙げて 名乗り出た人物にキラは心底驚いてしまう。
「アスラン!?」
 たった今、彼はダメだと思ったところだったのに。
 止めようと口を開くが それはアスランの手に止められた。
「キラに会長は向いていません。だから俺が引き受けます。宜しいですか?」
「…それは構わないが。」
 教師の方にしてみれば どちらでも歓迎だったから、特に問題視はしていないようだ。
 けれどキラはそうはいかなかった。
「ちょ、アスラン! そんな簡単に引き受けちゃって良いの? 小父さんだって…!」
「父なら良いと言うだろうさ。これも将来上に立つ者としての教育の一環だと。だから構わ
 ない。」
「でも…」
 納得がいかないと険しい表情をしていたキラだったが、ふと何か思いついたように顔を上
 げた。

「―――なら、僕が副会長になる。」
「キラ?」
「気心知れた相手の方がアスランもやりやすいでしょう? 会長は無理だけど、補佐くらい
 なら僕にだってできるよ。」
 それが一番だと思った。アスランの負担を少しでも減らす為には。
 彼は何より まず人間関係の方でつまずきそうだから。
「あとの役員はカガリとラクスで。これならアスランも気を使わずに済むよね?」
 これが最善案だと言って、キラは勝手にどうですか?と教師に言い出す。
「こちらとしては問題無い。…ザラは?」
 最終決定権はアスランにある。
 キラと教師の視線を受け、彼は一度目を閉じた。

「―――そうですね。」
 そして再び目を開けると微笑ってアスランはキラの肩に手を置いた。
「このメンバーでお願いします。きっと最高の生徒会になるでしょう。」



 それが、その後数々の伝説を作る キラ達4人が生徒会に任命された日。








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AA学園の生徒会長は任命制なのです。役員は会長が選びます。



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