キラが准将になる話


「私は一緒に行けない。だから私の代わりに艦隊を率いる者が必要だ。」
 ブリッジにアークエンジェルの主たるメンバーが集められ、1段高い所に立つカガリが最初にそ
 う言ったのが始まりだった。


「マリューさんじゃダメなんですか?」
 艦長だし、とまず提案したのはキラ。
 しかし彼女はダメだと首を振る。
「いくら旗艦だと言っても私には艦隊を率いるだけの能力はないわ。AAだけで行動していた時と
 はわけが違うもの。」
 今度は宇宙へと上がるオーブ軍全体をまとめなければならないのだ。
 2年前のように3艦だけの時とも違う。
 正式な軍として、つまり軍の全権を預けられることになる。
 カガリが最初に言ったように、カガリの―――国家元首の代理として。その責任は重大だ。
「軍を率いるためにはそれだけの能力とカリスマ性が必要なの。」
 マリューの説明にはキラも確かに納得した。
 彼女でも役不足ではないのだろうけれど、やはり責任の重さを考えると 優しい彼女では無理をさ
 せてしまうかもしれない。

「…なら アスラン?」
 ぐるりと辺りを見回して、隣の親友へと目を向ける。
 彼ならば ザフトでもトップエリートだったのだし、どうだろうと。
「カリスマ云々の前に、この前までザフトにいて、しかも戦っていた俺じゃ反発する者も当然いる
 だろう?」
 けれど、アスランからの返事も否。
 その理由も反論できないもので。
「じゃあ俺も却下だな。」
 次に目を向けた元地球軍大佐こと、ムウさん(仮)もこちらが言う前に却下されてしまった。


「カリスマ性って言ったらラクスだけど… ラクスはエターナルだしなぁ…」
 カガリがボソリとぼやく。
 今はアークエンジェルに乗っているラクスだが、宇宙に上がればエターナルの艦長を務めなけれ
 ばならないのだ。
 オーブの旗艦はアークエンジェルであり、エターナルの彼女では無理。

 では、一体誰がカガリの代わりを務めれば良いのだろう。


「周りが納得するだけの実力とカリスマ性ね……」
 もう一度ボソリと呟いて、ふとカガリの視線がある一点へ向けられる。

「……え、」

「あぁ そうか。」
 気づいたアスランも納得したような声を上げた。
「これ程適任もいないわね。」
 ふふ とマリューが笑う。
 周りの面々も似たような表情だ。

「頑張れ。」
 笑顔でぽんと、カガリに肩を叩かれる。

「…。ちょっと待って! 僕こそ問題ありじゃないの!?」
 突然降りかかった事態に、当のキラが1番慌てた。


「なんで? 実力は言うことないし、お前"キラ様"だし。」
 お前相手に反発する奴はいないだろ?と。
 心底不思議そうに首を傾げるカガリはもう勝手に決定しているようだ。
 それでもキラの方は納得するわけにいかなかった。
「だって僕、まともな軍事訓練も受けてないんだよ?」

 なりゆきでストライクに乗ってから2年。
 今も自分の意志で戦場に戻ってはいるものの、戦闘はMSのみ、操縦は常に勘。
 地球軍では正式な階級はあっても、実践が訓練のようなものだったので アスラン達のように正式
 な軍事訓練など受けたことはない。
 そんな自分がトップに立つのはかなり問題があるのではないだろうか。

 …けれど。

「必要なところだけアスランに習え。お前ならそれで十分だろ?」
 そういうものなの?とかなり疑問に思う。

 しかしもう"否"という言葉は受け入れられそうにない状況だ。


「階級も准将にするから。大出世だな。」
「しすぎだよ…」

 今まで着ていたのは三尉の服。
 これは単にサイズの問題だったのだけれど。
 つまりはいきなり全てをすっ飛ばして准将に昇進したことになる。
 普通は有り得ない事態だ。

「気にするな。この前まで敵軍だった俺達もいきなり一佐だ。」
 軽い調子でムウ(仮)が言うが、それもどうなんだろうか…


 こんな集団が旗艦のクルーで良いのだろうかと。
 キラは 少しだけ思ってしまった。







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ギャグなので気にしないで下さい。



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