キラinザフト 番外
※「種のタネ」にあるネタの番外です。
「救命ポット?」
ニコルからの通信を受け、キラは画面を見つつ聞き返した。
『はい。どうします?』
「…回収して。」
問いに即答すれば、ニコルが満足げに微笑う。
『了解。』
「…よろしいのですか?」
通信を切ったところで、ブリッジのクルーがキラを振り返り見て問う。
「何が?」
「クルーゼ隊長の指示も無く、こんな勝手に判断されては…」
彼は心配して言ったのだろう。
けれどキラは平然として 口元だけの笑みを向けた。
「救命ポットなんだから助けるのは当たり前だろう? それに隊長でも同じ判断をするよ
きっと。」
「は、はぁ…」
そう言われてしまっては、彼も何も言えなかった。
回収されたポットの周りに 野次馬も集まってかなりの数が人垣を作る。
その最前列にはキラと隊長、そして赤の軍服を着た5人。
ニコルを除く4人は命令という形でここに来ていた。
指示に従って 整備員がハッチを開ける。
誰が出てくるのか、そう誰もが期待した面持ちで見つめていると、
「ハロ ハロ〜〜」
いかにも緊張感の抜ける声を出しながら、ピンクの球状の物体がふよふよと中から現れた。
「アレは…」
「え…?」
「まさか…」
「何故ここに…」
「ハロ…?」
誰が誰だか分からない呟き。それは誰もが言いたいことで。
「「「「!!?」」」」
一部の人物を除けば画面の中でしか見たことがない物。
それでこの中に誰が居るのか予想がついたが、まだ俄かに信じられない。
そう思って皆が凝視している中、その少女は現れたのだった。
誰もが言葉を失った。
無重力に近い空間の中で広がる桃色の髪、白基調のドレスに身を包んで、彼女はフワフワと宙に
浮く。
それは間違いなく我々の歌姫。
注目を浴びる中、彼女は目的の人物を見つけるとそちらに向かって微笑み、その名を呼ぶ。
しかし、その視線と名は周りの予想を裏切るものだった。
「キラ!」
呼ばれた本人は少々驚いたものの、手を差し出して腕を軽く引き、そのまま流れていきそうだっ
た彼女を自分の前に着地させる。
「ありがとうございます。お久しぶりですわね。」
ふふ、と笑えばキラは少し困ったような笑みを返した。
「ラクス、無事で良かったよ。君が行方不明と聞いて心配だった。」
けれどその後、でも、と付け加える。
彼女が首を傾げると 彼は少々呆れた声音で指差した。
「最初に挨拶をする人が違うよ ラクス。」
あら、とキラの指の先を見れば、もう1人の見知った人物。
つまり自分の婚約者がいた。
「こんにちわ、アスラン。キラの方が先に目に付いてしまったので、ごめんなさい。」
ニッコリと、けれどそこに謝罪という様子は感じられなくて。
「あ、いえ…」
それだけ返してアスランは黙り込む。
周りとしては濃紺より赤の方が明らかに目立つだろうとか、こんなに近いのに何故婚約者でなく
キラの方に目が行くのかとか、つっこみたかった。
ただ、後が怖いので何も言わなかったけれど。
「詳しい話は後で誰かが聞くだろうけれど…」
「あ、キラ。」
言葉を遮るように、彼女は可愛く首を傾げつつ微笑う。
「今度のコンサートは来られますか?」
「え? 今度? ってホワイトシンフォニーのだよね。…まだ分からないよ。戦況次第かな。」
「そうですか… でも、5月は来て下さい。貴方のための歌をご用意していますから。」
お誕生日ですものねv
そういえば、とキラは苦笑いしつつも「考えておく」と答えた。
端から見ればアスランとより明らかに婚約者に見える2人だけれど、当のアスランは会話に入る
ことなくただ黙っている。
「…知り合い、ですか?」
全員の疑問に応えて訊いたのはニコルで。
ラクスの表情はきょとん、となった。
「あら? だってキラは…」
「ラクス。」
優しい声と調子だけれど それには制止の力が込められていて。
彼女はキラにだけ分かる「分かった」の表情をするとニコルに向かってニッコリと笑んだ。
「以前、一度偶然にお会いしてから仲良くなりましたの。」
考えることが似ているので話が合うのですわ。
「そうだったんですか。」
キラの抑止の言葉が気になるものの、とりあえず皆納得した。
「…アスラン。」
今まで沈黙を守っていた隊長から突然呼ばれ、アスランは我に返って顔を上げる。
「はっ、なんでしょう?」
「ラクス嬢を部屋に。久々に会うのだろう? 話などゆっくりすると良い。」
「は、はぁ…」
ちょっと間の抜けた返事だけれど、隊長は気にもしていない様子で。
今度は少し不満げに見える彼女に告げた。
「キラには仕事があるのですよ。」
「…仕方ありませんわね。けれど、時間があったらお話したいですわね。」
キラと微笑みあう。
そして、アスランの腕に自分の腕を絡めた。
「部屋までよろしくお願いしますわ。」
アスランは表情からは分からないけれどかなり驚いたようで、でも離れようとしても離れられ
ない。
諦めて、そのまま周りが開けた道から出て行った。
そしてクルーがばらける中、隊長がキラを呼び止める。
「付いて来なさい。話がある。」
「はい。」
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オチが無い話… 続けようかと思ってそのままだ…
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