選んだ道の先 −≪番外1≫
捕獲するのはストライクだけだ。他はどうなっても構わない。
躊躇わず、イザークは引き金を引いた。
が。
ドガガガガガ!!
「!?」
次の瞬間 その攻撃を受けていたのはストライクだった。
向かってきた戦闘機を庇うようにして、全ての攻撃を捨て身で受け止めたのだ。
「え…!?」
今まで後ろに居たはずの機体が何故か前にいた。
それに驚いたニコルは 元居た場所と今の場所を見比べる。
確かにそこに姿は無く。
いつの間に移動したのだろうか。背中に冷たいものが通った。
動体視力には自信がある自分にすら その動きが全く分からなかった。
「…!」
一方 目の前の機体が火花を散らすのを見てアスランは愕然とする。
キラは無事か!?
「イザーク! ストライクのパイロットは無傷で捕獲しろと言ったはずだ!!」
「…わざとじゃない。」
常に無い気迫におされはしたものの、変わらず無表情でイザークは応える。
「…っ!」
「アスラン 抑えて!」
さらに言い募ろうとした時、ニコルが間に割って入った。
「仲間割れしていても作戦は成り立ちません!」
「…ニコル…」
「フン…」
「すまない…」
「! 足付きが!」
「「「!!」」」
ディアッカの声に全員が振り向く。
急に加速した白亜の戦艦が 身を翻して去っていく所だった。
「俺は追うぜ!」
しかし、向かおうとすると その前にストライクが立ち塞がる。
*******
「ク…ッ」
「何っ!?」
捨て身で向かってくるキラは彼らには奇異に映った。
死ぬ気か!?
そうとしか思えないほど無防備で、無茶な動きで。
捕獲を命じられている為、彼らの手はわずかに鈍る。
それをキラが知る由も無いのだが、彼らにはとても厄介だった。
無茶苦茶だ、誰もがそう思った。
これは生き残るための戦い方じゃない。
…死ぬための、だ。
「正気か!?」
誰かが叫ぶ。
いや、もしかしたら自分の声だったかもしれない、とアスランは思った。
キラの様子がおかしいことには気づいていた。
フェンス越しの他人のような会話の時、深い悲しみの色を映した瞳に。
嫌な予感を覚えた。
やはりあの時無理矢理にでも連れ出すべきだったのかもしれない。
後ろから追いかけてきたカガリに遠慮したりせずに。
こんな…
胸が締め付けられるような戦い方は…
見たくない、とアスランは苦痛に歪んだ表情で ぐっと操縦桿を握り込んだ。
しばらく交戦した後に ストライクの色が消えていく。
―――フェイズシフトダウン。
これ以上彼に抵抗は不可能だ。
イザークのサーベルがストライクを目掛ける。
「イザーク!?」
ハッとしたアスランが驚きの声をあげた。
が、イザークは躊躇いも見せずに機体に突っ込んで行く。
「安心しろ、狙うのは脚だ。」
言うが早いか、いとも容易く両脚は切断され 地に落ちた。
「…後は貴様の仕事だ。」
「ストライク捕獲成功。帰艦します。」
それだけ伝えてアスランは通信を切った。
キラが今何を思っているかは分からない。
前のように怒るだろうか。
だけど、俺はお前を離したくない。
これが最後のチャンスだったんだ。
今度こそ、―――離さない。
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管:気づいてたんだ、キラの様子がおかしいこと。
ア:あれは気づかない方がおかしい。やっぱり連れ出していればっ
管:…フェンスあったんだけど?
ア:そんなもの壊せば良い。
管:オイ。
ア:今にも泣きそうだったんだぞ!? それが俺のせいかと思うと…!
管:そういや なんでカガリに遠慮?
ア:知り合いってバレたらキラが責められるかと。
管:…協力してくれたかもよ?
ア:狽サの手があったか!
管:いや、真に受けるな…(汗)
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