選んだ道の先 −≪番外4≫


 ガンッ

 鈍い音を立て、壁に拳がめり込むのではないかというほど。
 苛立ちをぶつけるように 力の限りに打ち付けた。
 痛みは感じなかった。
 それ以上にどろどろと渦巻く感情が勝って。
 手の痺れなんてどうでも良かった。

「クソ…っ」
 そのままズルズルとロックしたドアを背に座り込む。

 気づかなければ良かった。
 キラの気持ちなんて知らずにいたかった。

 どんな些細な変化でも 何を考えているのかも。
 キラのことなら何でも気づいて何でも知っていた。
 それが俺の誇りだった。
 キラの嘘なんかすぐに見分けられる。
 そんな自分は好きだった。

 でも、今だけは。
 そんな自分を恨みたかった。


 あの時感じたのがただの嫉妬心なら。
 イザークにぶつけて取り返せば良いだけのこと。
 簡単だ。

 けれど。
 キラが望むのは俺が離れていくこと。
 優しさ故の残酷さ。

 気づいてしまったから居られなかった。
 俺が傍にいればその分キラが傷付いていく。

「ごめん、キラ。」

 今まで気づかなくて。
 自分のことで精一杯で。

 俺が、キラを傷つけている。
 誰にも傷つけさせない、そう思っていた俺が。

 それに気づいたから。
 気づいてしまったから。


「これでお前がもう傷つかずに済むなら 俺は…」

 お前の望み通り。
 お前の傍を離れよう。
 もうお前に近づかないよ。
 それで良いんだろう?

 だからその代わり。
 知らないままでいて。

 今はまだ告げれないこと。
 俺達がしようとしていること。
 お前の願いを叶えさせない為に動いていること。


 きっとお前は俺を許さないだろう。
 でもそれでも良い。
 お前が生きてさえいれば。

「俺が望むのはそれだけだから…」







---------------------------------------------------------------------


管:去った後のアスランを別カメで追ってみました、な感じですか?
    この連載で初めて単体を書きました。(今まで必ず誰かいた)

管:―――何だ。気づいてたのか。
ア:気づかない方がまだ幸せだった気もするが、キラのことだからな。
管:チッ
ア:何?(笑顔)
管:何でもv(笑顔)(イザークに取られるぞとか脅そうと思ってたのに…)
ア:今 何考えた?
管:何にもv それより敵前逃亡なんてして良かったの?
ア:仕方ないさ。キラを傷つけたくなかったんだ。
管:今更?
ア:言うな。気づいたからこれ以上は嫌だったんだよ。
管:…珍しくまともなコメントだわ。



BACK