理由
空は青い。
人工で無い太陽は高くて眩しい。
でも、ベッドに寝転がったミリアリアにはそれを見たところで特に感じるものも無かった。
何もする気が起きない。
今もたまにある そんな日。
♪♪♪
脇に置いた携帯からメールの着信を知らせる音がする。
誰から、は見なくても分かった。
相手が勝手に設定してくれたから。
"彼"の時だけ音が違う。
気だるげに身を起こして画面を開く。
「…………」
見て、再び携帯を閉じて。
放り出すとさっきのようにベッドに寝転がった。
…1ヶ月ぶりに連絡してきて、今から会いたいなんてバカじゃないの?
―――本当は知っている。
地球にいないとメールが届かないことくらい。
1ヶ月ぶりにプラントから来て、1番に連絡をしてきたことも。
「…私の都合も考えなさいよ。」
意味も無く 小さな悪態をつく。
こちらの都合、断る理由。
けれど 今日の予定など何もない。
誘いがないなら1日ベッドの上。
…知っている。
彼がこんなメールを送ってきた理由くらい。
ちゃんと気づいてる。
私が今何をしているかくらい、あいつはお見通しなのよ。
だから呼び出したりする。
―――元気づける為、私の為…
「………」
ミリアリアは深い溜め息をつくと、転がった携帯を再び掴んだ。
「あら。どこか行くの?」
玄関に向かう途中で見かけた母親が声をかけてくる。
「…呼び出されたから。」
簡単に行き先を告げたら、それだけで相手が誰だか分かったようだった。
彼女はミリアリアに向かってニッコリと笑う。
「今度うちに連れて来なさい。お礼が言いたいわ。」
「…お礼って何。」
眉を顰めるとますます笑みを深めて 嬉しそうな表情をした。
「あら、だってその人のおかげで貴女 外に出るようになったんじゃない。」
確かに呼び出されなければ外に出ない。
写真を見つめて蹲ることだってしょっちゅう。
…でも。
あいつが頻繁に誘ってくるから。煩いほどこっちに来ては呼び出すから。
おかげで最近は外に出ようという気になることが多くなった。
それは確か。
でも、それはなんだか癪。
「…気が向いて、あいつが良いって言ったらね。」
だから母親には曖昧な答えを返しておいた。
実際はあいつなら喜んで返事をするだろうけど。
それは"気が向いて" 私が尋ねたらの場合。
こっちから誘うなんて、そんなこと、したくないのが本音。
お母さんが信頼し始めているだけに、すごく癪だわ。
「…呼び出したくせに遅刻なんかしたら許さないから。」
待ち合わせのカフェは近い。
ミリアリアは歩む足を少しだけ速めた。
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私的妄想戦後ディアミリでした。
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