プレゼント


 ―――付き合いが長いということ。
 誰よりも相手のことを知っている、それが利点。そして誇り。
 でも、その長さが時に困らせることもある。







「…キラ。」
 夕食の片付けを済ませ キラが寝転ぶソファの端に座る。
 呼ばれて"何?"と雑誌から目を離してこちらを覗き込む彼は少し眠そうに目を擦った。

「キラ、」
 もう一度名前を呼ぶ。
 特に意味もなく呼んだそれに不思議そうにキラは首を傾げて。
 その頭を撫でてやると、嬉しそうに、柔らかく笑み崩れた。

 ころころと変わるキラの表情、それを見るのはとても好きだ。
 中でも一番は笑顔。もっと見たいと思ってしまう。
 だから、今これを聞きたかった。

「何か、欲しいモノはないか?」
「……?」
 大きな瞳をパチパチ瞬かせてキラはきょとんとしている。
 明らかに質問の意図が通じなかったようだ。
 前置きも何もない質問は流石に唐突過ぎたかと 口下手な自分を後悔したけれど、今更何を言え
 ばいいのか分からない。
 すると考え込んでいたキラが 思いついたとでもいうようにパッと顔を上げた。
「たこ焼きが食べたい。」

 …それはちょっと予想外の答えだ。

「…どうしてたこ焼きなんだ?」
「別に。ただ食べたいなーって今思っただけ。」
 なかなか思うようにはいかない。アスランは内心溜め息をついた。


 アスランはただ、誕生日プレゼントに欲しいものを聞きたかったのだが。
 付き合いも10年を越えればネタが尽きてくる。
 何をあげたら喜ばせられるだろう、今頭の中はそれでいっぱいだ。
 本当は1つ思いついたものもあるけれど、最終手段はまだ少し先にとっておきたかった。

 幼馴染として親友として、そして恋人として。
 年に1度の誕生日、ならばやっぱり喜ばせてやりたいし、キラの笑顔が見たい。
 けれど流石に思いつかなくなって困ってしまったのだ。誕生日までにはもう日もないし。

 だから聞いたのだけれど。
 …世の中はなかなか上手くいかない。
 たかだか誕生日プレゼントでそこまで悩まなくても…と思う者もいるかもしれないが、アスラン
 にとっては大問題だ。
 付き合いが長いからこそ、手は抜けない。彼に喜んでもらう為に。


「…? 変なアスラン。」
 聞くだけ聞いて黙り込んでしまったアスランにキラは首を傾げるしかない。
 数回呼んでも返事がなく、終いにはキラも諦めて下に落ちた雑誌を拾った。




 …ちなみにたこ焼きは次の日お土産に買って帰ってプレゼント。
 喜んでもらったし、笑顔も見れた。…けれど。

「誕生日、どうしようか…」


 本番は1週間後。
 アスランの悩みはまだ尽きない。







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いつだよ、と思われるだろう頃に書いたキラBD話。



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