おめでとう


「アスランさん、はい どうぞ♪」
「…あぁ、ありがとう……」
 廊下で会ったメイリンから笑顔で渡されたものは 可愛くラッピングされた紙袋。
 アスランは戸惑いつつも 本日何度目かになる返事を返す。

「じゃ、私 急いでるので!」
 そう言って慌しく手を振って去っていく彼女を見送ったアスランは、彼女が先の角に消えると 
 貰った袋に視線を落とした。
 花柄の紙袋に緑色のリボン、重さと感触から 中身はクッキーか何かのようだ。

「これで"おめでとう"を言われるのは何人目だろう…」
 物をくれたのは彼女だけだが、今日はすれ違ったほとんどの人達からその言葉を貰っていた。

 言葉はどこまでもあたたかい。
 誰もが笑顔で。

 でも、ひとつだけ疑問があるのだが―――、、、







「アスラン、おめでとう。」

 部屋に戻ったアスランを出迎えてくれたキラの第一声もそれだった。
「ありがとう…」
 今までと同じように反射的に返したアスランだったが、今までと違って キラはじっとアスラン
 の顔を覗き込む。
「…キラ…?」
「ね、アスラン。」
 上目遣いでこちらを見る彼は 男というのが嘘だと思えるほど可愛らしい。
 これがオーブ軍を率いる准将で、あのフリーダムのパイロットだと信じる者は何人いるだろう。
 そんなことをぼけっと考えていたら、ますますキラの顔が近づいてきて。
 キスでもされるのかと思ったら、残念ながら直前で止まった。

「…今日が何の日だか、実は分かってないでしょう?」
 少し呆れたように言われて アスランは首を傾げる。
「何か特別なことでもあったか?」
 おめでとうと言われてはいたが。

 …そう、これが疑問だ。
 何故今日はいろいろな人から"おめでとう"と言われるのか。

「…やっぱり…」
 がくっと項垂れて、キラはアスランの胸にぽすんと頭を埋める。
 キラの言葉の意味はよく分からなかったが、今の状況を幸いとそのまま抱きしめて 久しぶりの
 キラの感触を確かめることにした。
 しばらくキラの指通りの良い髪を梳いていると 呆れたとはっきり記した顔で見上げてきて。

「今日はね、君の誕生日。だからみんな君におめでとうって言うんだよ。」
 でもそんなところがアスランだよね、と。
 苦笑いで言われた。

「…そうか…」

 すっかり忘れていた。
 忙しい今の状況の中では、自分のことなどずっと後回しにしていたから。



「―――じゃあもう1度言うね。」
 離れたキラが笑顔を向ける。


「お誕生日おめでとう、アスラン。」







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今年はアスランもキラも日記でしか祝えませんでした…
この後「プレゼントはキラで」とか真剣に言ってキラに殴られるわけですね☆(避けそうだが…)



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